ベーからの手紙      

No.167  2018年6月5日

 元気ですか?

 残念ながら、とうとう、バナ子が僕たちのところに来てしまいました。
 11才と4ヵ月は、セント・バーナードとして長生きの方かもしれません。
 でも、バナ子には、できればもう少し生きていてほしかった。 
       家族のために。


 突然の出来事でした。
 僕のようにほとんど寝たきりになることもなく、ヨハンの時みたいに熱中症に
 かかってしまったわけでもなく、前の日の夜まで、本当にいつもと変わらない様子
 でした。
 日中は、店のレジの後ろでぐっすりと眠り、たまにバナ子がいることに気づいた
 お客様にしっぽを振って愛想をふりまき、散歩も、食事も、夕食後のおやつの
 ガムも、全部いつも通りでした。

 日曜日の明け方、ママが様子を見た時には、気持ちよさそうに寝ていたそうです。
 それからほんの数時間くらい、あっという間でした。

 ドンッ! ガタンッ!という何かがガラス戸にぶつかる物音がして、ママは布団
 から起き上がりました。
 戸を開けると、バナが伏せています。でも、なにか様子が変です。
 肩で息をして苦しそうです。 目が、うつろです。
 足元を見て、ママは床にウンチがいくつも転がっているのに気づきました。
 家の中で粗相をするなんて、こんなことは今までありませんでした。
 おかしい。

 ママは、あわててパパをたたき起こしました。
 この日、たまたま、あゆちゃんが家に泊まりにきていました。
 あゆちゃんも、バナのもとに走り寄りました。
 3人でなんとかバナを立ち上がらせようとしたけれど・・・だめです。
 前の日の夜までしっかりしていた前足から崩れるように倒れてしまいます。
 立つことができません。
  「バナ!」 「バナ子!」
 口々に声をかけてみても、バナ子は、ただつらそうです。
  
  「すぐ病院に行こう。」
 動くことができないバナ子の体を抱え上げて外に出て、車に乗せるのは
 3人がかりでも大変そうでした。
 
 バナ子に寄り添って座っているあゆちゃんが、時々泣きそうな声を上げます。
  「バナ!」
 あぁ、これは、ヨハンの時と同じ光景です。
 あの日、病院に駆けつけようとする車の中で、ひろちゃんがヨハンに
 寄り添っていました。 あゆちゃんは、遠いイタリアでした。
 今、ひろちゃんは東京にいます。
  「バナが息をしているのか、車が揺れて体が動くだけなのか、わからない!」

 病院では、救急救命室で準備をして先生たちが待機してくれていました。
 担架で中に運び込まれるバナ子を、待合室にいる他の飼い主さんたちが
 無言で見送ります。

  「バナちゃん、がんばれ! 今、息ができるようにしてあげるからね。」
 気管挿入をして、注射をして・・・でも、モニターに映し出されるバナの命を
 示す線は、まっすぐな1本の線になってしまいました。
  「バナ・・・」 「バナ子・・・」

 ひろちゃんは、東京での予定を切り上げて新幹線に飛び乗ったそうだけど、
 あんなに愛したバナ子の最期には間に合いませんでした。

 あまりにも突然だったけれど、でも、僕にはわかるような気がします。
 バナ子は、大切な家族に苦労をかけたくないから、あの日に旅立ったんじゃ
 ないかと思うんです。
 あの日、偶然あゆちゃんが泊まりに来ていたけれど、パパとママの2人では
 バナ子を運び出すのは無理だったろうと思います。
 最期にあゆちゃんにそばにいてもらえて、安心しただろうな。
 そして、次の日からは、パパはお店の外での仕事の予定がずっと続いて
 いました。もし、倒れたのが次の日だったとしても、ママが1人ではどうにも
 できなかったでしょう。
 1年前の今頃は下痢が続き、毎日病院に通って数時間の点滴をしていました。
 蒸し暑くなってきてまた具合が悪くなったら、お仕事で忙しいのにみんなが
 困っちゃう。
 きっと、バナ子はそう思ったんじゃないのかな。

 みんな、そんなに悲しまないで。
 バナ子には、気の強い1代目のベートーベンと、やさしいヨハンと、僕が
 ついているから。 かわいい妹を大事にするから。
 
                       今日はここまで、またね。
                             
Beethoven


本当の姉妹のようでした。

スイカ、ちょうだい。

あゆと走る!

さようなら、バナ子
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