ベーからの手紙      

No.144  2009年12月1日

 元気ですか?
 ヨハンが天国の僕のところへ来て、そして、バナ子が
 我が家の新しい家族になって、もう4ヶ月が経ちます。
 元気いっぱいのバナ子との生活のリズムにも、
 うちの家族はようやく慣れてきたみたいです。
 
 

ヨハンは、もともと、おっとり、のんびりの性格でした。
それに、2才でうちに来た時は、後ろ足をちょっと引きずるような歩き方を
していました。だから、たまに駆けることがあっても、足の付け根が痛むらしく
すぐにスピードを落として立ち止まります。
おまけに、乳歯からの生え代わりがうまくいかなかったのか、歯がとても
小さく、歯並びはまばらでした。がっちりと噛むことができないから、犬なら
大好きな引っ張りっこにも興味がありませんでした。
そんなヨハンとの8年間の暮らしに慣れた家族は、散歩はのんびり、
遊びはゆったり、が当たり前になっていました。

さぁ、ところが僕らの新しい妹は、とにかく体中に元気が詰まっています。
かけっこ大好き、引っ張りっこはもっと好き、遊ぶ時はいつだって本気。
毎日、若いエネルギーを持て余しているお嬢さん。
それだけじゃない。末っ子特有のわがまま娘ときたもんだ。
パパとママを見ていると、バナ子のパワーについていくの少し大変そう。
ここは、10代のひろちゃんに任せるのがよさそうだな。

2代目のベートーベンの僕との時は、まだまだ幼かったひろちゃん。
僕がぐっすり眠っていると、背中に突然ドスンとまたがってきて、
頭の毛をグイグイと引っ張られたもんだっけ。
体重が75キロの僕でも、あれを我慢するのは結構つらかったんだよ。

ヨハンと過ごした時は、小学生から中学生、そして高校生へ。
本当に仲のいい、“小さな親分と大きな子分”でした。
ヨハンは、1番体重がある時で65キロの、やさしい男でした。

そして、今はバナ子の時代。
高校生のひろちゃんは、本当に面倒見のいいお姉ちゃんになりました。
体重50キロの小さなセント・バーナードは、ひろちゃんの姿を追いかけて
走り回ります。

僕達セント・バーナードと一緒に成長してきたひろちゃんは、パパとママが
ついヨハンとバナ子を比較するようなことを言ったり、うっかりバナ子を
「ヨハン」と呼ぶと、むっとした表情で怒ります。
怒ったその表情からは、バナ子を愛すると決めた心と、ヨハンへの
深い深い愛情が読み取れます。
 「バナ子、おいで!」
ひろちゃんが声をかけると、バナ子はしっぽを大きくブルンと振り回して
駆け寄ります。

さて一方、イタリアで生活しているあゆちゃんは、旅立ちの前の日に偶然
訓練所でバナ子に会っているけど、家族としてのバナ子をまだ知りません。
11月に10日間、イタリアのあゆちゃんのところへ行ってきたひろちゃんが
言いました。
 「あゆの部屋にね、スイスで買ったセント・バーナードのぬいぐるみが
  あった。名前、なんていうと思う?」
 「・・・ヨハン、でしょ?」 「あたり。」
う〜ん、あゆちゃんはヨハンの最期の時にそばにいられなかったから、
まだあきらめきれないのかもしれないねぇ。
帰国した時のあゆちゃんとバナ子の出会いは、どうなるかな。
今月、あゆちゃんは日本へ、家へ帰ってきます。

 「バナちゃ〜ん」
ええ?! ママ、 今、バナ子をなんて呼んだの?
僕らのことを「ヨハンちゃん、ベートーベンちゃん」なんて呼んだこと、
1度もなかったのにさ。まったく・・。

                            今日はここまで、またね。 
                                 Beethoven

西公園のグラウンドで、走る!

団地の公園で、くわえて引っ張る!

国際センターで、座る。

スポーツセンターの跡地で、座る。
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