ベーからの手紙      

No 119.NOV.1. 2005.



元気ですか?
とてもなつかしい場所へ行ってきました。
今から16年くらい前、パパとママと小さかったあゆちゃん、
プロのカメラマンさん、そして僕、
大きなカメラの機材を車に積んで出かけた場所、
左側の、僕のこの写真を撮った所です。


ああ、ここだ。 向こうに見える山並みは、そのままです。
広々と草地が続くこの場所で、昔、僕は写真のモデルを務めました。
スイスの救助用の樽を首につけてカメラマンさんに撮ってもらったこの写真は、
大きく引き伸ばして、お店にずっと飾ってあります。
そしてこの写真が、うちの店のトレードマークのデザインになりました。
 (「べーからの手紙 No.9」もお読み下さい。)

僕が若くて元気だった頃は、日曜日は家族みんなでいろんな所、
自然がいっぱいの所へよく遊びに行きました。
でもこの頃は、あゆちゃんもひろちゃんも、いろいろと忙しそう。
出かけることも、すっかりなくなりました。
あちこちの山や川を走り回っていた僕と違って、ヨハンは寝てばかりの毎日。
 「今度の休みは、久しぶりに出かけようか。 どこがいいだろう。」
パパ、あそこは、どう?
僕の写真と同じ場所、同じ格好で、ヨハンも写真を撮ってみたら?

風で草がなびく草原に立って、ヨハンはまぶしそうな顔をしました。
ピューッ!!、とすごいスピードで駆け出して、あっという間に姿が
小さくなったのは・・・ひろちゃん。
ヨハンは、ちょっとぎこちなく、でもうれしそうに体をくねらせると、
パパと一緒に草の上を走り出しました。
青空をトンビが舞っています。
 「ヨーハーン!!」
ひろちゃんの大きな声が呼ぶ方へ、ヨハンの体は緑の広い広い草原に
吸い込まれていきます。
いつもおとなしくて物静かなヨハンが、今日は晴れ晴れとした顔をしています。

さぁ、ヨハン、ちょっと重いだろうけど、この樽を首につけてごらん。
昔、僕がカメラマンさんと撮影したのは、確かこのあたり。
大きな反射板を草の上に立てて、パシャッ、パシャッ、と何枚も、何枚も。
あの時は、初夏でした。
僕の足の先が隠れるくらいに、足元の草が伸びていました。
晩秋の今は、草は短めです。
 「ヨハン!」
デジタルカメラを構えたパパが、シャッターを押しました。

僕は、お店のトレードマークのモデルの他にも、
新聞や雑誌の広告や取材の写真で、看板犬として時々仕事をしました。
僕の写真の影に隠れてしまうようなヨハンでしたが、
やっと、彼にもスポットライトが当たることになりました。
テレビ局からの撮影の申し込みに、ヒゲを切ってその日を待っていたヨハン。
腕組みをしたスタッフの人達が店の入り口に並び、
まぶしくて大きなライトを上から当てられても、
派手な衣装のタレントさんと、動じることなく掛け合いをすることができました。
うん、これなら、上出来!
テレビの出演はほんの短い時間だったけれど、家族みんなで、
録画したビデオテープを巻き戻しては何度も見ました。

僕は、出会った人達から、よくこう言われました。 「かっこいい!」
ヨハンは、すれ違う人から、今日もこう言われます。 「かーわいい!」
かっこいい僕、ベートーベンと、かわいいヨハン、
あなたは、どちらのセント・バーナードがお好きですか?

                                 今日はここまで、またね。
                          
                                        Beethoven

正面にポツンと小さく見えるのが、ひろ

斜面を転がるひろを、ヨハンは上から見てました

2代目ベートーベンが座った場所

6才のヨハン、いかがでしょうか?
No.118 No.120