ベーからの手紙      

No.135  2008年5月13日

 
 元気ですか?
 9才を過ぎたヨハンの散歩の道のりが、少しずつ短く
 なってきています。
 歩く速さも、だんだんとゆっくりに。
 目の回りは、だいぶ白髪が増えて白っぽく見えます。
 この頃のヨハンの急な体力の衰えがちょっと気になります。
          セント・バーナードの9才は、人間の70代くらいですから。

うちのおじいちゃんとヨハンが、14時間という長い船旅で疲れきって
しまわないか心配したのですが、今年の5月の連休は、思いきって
みんなで船に乗って北海道へ行ってきました。
おととしは青森、去年は山形と、おじいちゃんが昔、転勤で過ごした場所を
訪ね歩く家族の旅。
今年は、50年以上前のおじいちゃんの思い出がある札幌が目的地です。
ヨハンは車の中、家族は客室へ、みんなが乗りこんだフェリーは、夜8時に
仙台の港を出港です。
こんな時、うちの家族はじっとしていません。
重い扉を開けて夜風が吹くデッキへ飛び出すと、手すりにつかまって暗い海を
のぞきこみます。
白いしぶきを上げる大きな船体に沿って、深く輝く青い光が帯のようになって
追いかけてきます。
船員さんが、あれは夜光虫だと教えてくれました。
神秘的な美しい青い光に包まれて北へ進む大きな船が、僕がいる空からも
見えます。

広い! やっぱり、北海道は広いですね、道も、公園も。
でも広々とした場所へ来ても、年老いたヨハンはいつも通りに、じっと
おとなしくしているだけ。 
走りたがるわけじゃなし、喜ぶでもなし、家族と一緒ならどこにいても同じです。
旅行の間、ヨハンはほとんど車の中で眠っていました。

ずっと昔、若い頃に仕事をしていた場所へやって来たおじいちゃん。
もちろん、その頃の建物は何も残っていませんが、入口の門の前で
記念写真を撮りました。
近くの橋を眺めると、「そうだ。ここに夕涼みに来たもんだった。」
50年の時の流れが、どんどん戻ってくるみたいです。
ママのお姉さんが生まれたのは、札幌でした。
大学病院の前を車で通ります。
ここで自分の初めての子が産声を上げた時、おじいちゃんはパチンコを
していたそうなんですけどね。
札幌の時計台の前で、ねんねこで赤ちゃんをおんぶしてこちらを見る、
若々しい姿のおばあちゃんの写真が古いアルバムにあります。
あゆちゃんとひろちゃんが、時計台前の同じ場所で何枚も写真を写します。

今年の旅は、おじいちゃんにはもう1つの楽しみがありました。
旅に出る直前、年賀状のやり取りだけは続けていた小樽に住む古い友達から、
50年ぶりに電話がかかってきたんですって。
お互いに若かった時代、札幌で一緒に仕事をしていた仲間だそうです。
その人と、50年ぶりの再会の約束をしました。
小樽の海岸沿いの町で、家族4人はイルカのジャンプショーを見に水族館へ、
おじいちゃんは鰊御殿の下にある食堂で、なつかしい友人とニシンとウニを
肴に話がはずみ、そしてヨハンは、相変わらず車の中でぐっすりと昼寝です。

フェリーから眺めた夜の海、朝になるとデッキで目をこらして見つけた
北海道の陸地、羊達がいるのどかな札幌の風景、レンガや石造りの古い
建物が続く小樽の街並み、おみやげに買ったガラス細工。
あゆちゃんとひろちゃんも、何十年か経ってからきっと思い出すことが
あるんでしょうね。

ヨハンも・・・、そうですね、船に大きく揺られながら眠った思い出が、
多分、残っていると思います。
どうせヨハンは車で寝ているだけなんだから、来年もまた、家族で
旅に出られるかな?
                    
                        今日はここまで、またね。 
                                 Beethoven

フェリーで「犬が車に乗っています」の表示

札幌・旧北海道庁の建物の正面です

旧道庁前の広場で、中を見学の家族を待ちます

観光客が次々とヨハンにカメラを向けました
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