ベーからの手紙      

No.111.OCT .26. 2004.


 
元気ですか?
 Yさんファミリーのヨーロッパ訪問記、いよいよ、
 「第1回バリー・カップ」が開かれる
 アルプスのサン・ベルナール峠へ向かいます。



サン・ベルナール峠は、僕達セント・バーナード犬の祖先が、昔、雪山の人命救助で
活躍していた場所です。
グイドさんに、宿坊(ホスピス)へのYさん達の宿泊の予約を頼みました。
日本を出発する直前、念のため、予約の確認をしました。
すると、こんな返事が返ってきました。
 「ええっと・・、説明するのは難しいんだけど、ホスピスは、一般のホテルのような
  いわゆる『予約』の体制は取っていないんだ。 でも、大丈夫、安心して。
  Yさんファミリーは間違いなく泊まれるから。」
グイドさん、言いづらいことがあるような様子です。 ちょっと心配になりました。
 「何か、問題があるのかい?」と、パパ。
 「いや、その・・。 実は、僧院に電話をかけたら、頭にくることを言われたんだ。
  『宿泊の予約は受け付けていない。』と切り出して、『しかし、その週末は
  予約で満杯だから泊められない。』とさ。
  これは、なんとも腹立たしい現実なんだけど、あの僧院の僧侶達は、
  我々、セント・バーナードの愛犬家を嫌っているんだ。
  つまり、僧院とホスピスは、あくまでも巡礼者のためのものであり、
  君達、犬の会合のためのものじゃない、ってね。
  あ、でも、ほんとに心配しないで。私が、ちゃんと部屋を確保したから。」
ふ〜む、そういうことか。
確かに、僧院はキリスト教を信仰する人々が祈りを捧げる神聖な場所。
「セント・バーナード発祥の地」として観光客が押し寄せるのは、
僧侶の人達にとっては迷惑なことなのかもしれませんね。
あ! もしかすると・・・。
 「日本人観光客の1部がぶしつけな行動をして、僧侶達がいやな経験をしたことが
  あるんじゃないかな?」
 「違うよ! 日本人は、ぶしつけなんかじゃない。
  ぶしつけなのは、彼ら、修道僧だよ!!
  イタリア人に対しても、ドイツ人に対しても、同じ態度をとるぜ。」
グイドさん、よほど怒っているみたい・・。

  『 9月11日  サン・ベルナール峠 』

Yさんファミリーは、お昼頃に到着。
3ヶ国のクラブが主催するセント・バーナードのドッグ・ショーは真っ盛り。
アメリカのドッグ・ショーはプロ意識がとても強く、登場する犬達は洗練されて
ショーマナーも見事、ハンドラー(犬を引いてリードする人)もプロの人が多いです。
今日のアルプスのショーは、ハンドラーは、その犬の飼い主さん、
犬達も磨き上げるわけでもなく、シャンプーをしただけ、という様子です。
 「お祭の要素が強いようですね。 ただ、いい犬だなぁ、と思った犬は、
  やはり残っています。 こちらのバーナードは平均的に体高(背の高さ)があり、
  体重はあまりないようですね。」と、Yさん。 
 「ヴィットリオが(ヨーロッパに犬を輸入して)アメリカの良い犬の血を入れるよ。」
と、グイドさん。
Yさん 「アメリカの犬は見かけはいいけど、内容がよくないような気がしますが。」
グイドさん 「アメリカにも、良いブリーダー(繁殖者)と悪いブリーダーがいる。
       それは、どこでも同じさ。」

おや、ショーの順位を決めた後、審査員が回りの観客に何か話をしていますよ。
つまり、どうしてこの順位になったか、という理由の説明ですね。
日本のショーでもこれをやってくれると、後になって人間同士がもめることが
少なくなるんだろうけどなぁ。
第1回バリー・カップの優勝犬は、実に堂々とした、スムース(毛の短いタイプ)の
オスのセント・バーナードでした。

この日の夜は、セント・バーナードを愛する各国のおよそ100人の人が出席して、
峠のホテルでディナー。
英語・イタリア語・フランス語・ドイツ語で、よくしゃべり、よく飲み、よく食べ、
くじ引きを楽しみ・・・、にぎやかなパーティーです。

翌日の12日は、人間とセント・バーナードが一緒にアルプスの山を歩くトレッキング。
でもYさんファミリーは、日本へ戻らなけれならない時間が近づいてきました。
トレッキングのスタートを見送ってからチューリッヒ空港へ向かう予定でしたが、
あいにく、アルプスは濃い霧に包まれています。
 「飛行機に間に合わなくなってしまう。 残念だけど、出発します。」
別れを告げるYさんを、AISB会長のボノーミさんが熱心に引き止めます。
 「あと20分、待て! スタートは、ぜひ見ていってくれ。」
時計とにらめっこで待つ間に、やがて霧が晴れ、明るくなってきました。
気をつけて! ヨーロッパの仲間達。
ドッグ・トレッキングがスタートしました。

グイド 「やぁ、バリー・カップは無事に終わったよ。
     Yさんは、『ここ』にいた! どうだ、うらやましいだろう? へっへっ。
     Yさんは、俺達のことをなんて言ってる? 楽しんでもらえたかな?」
ヒロシ 「いろいろと、ありがとう。 とても喜んでいるよ。
      『イタリアの男達は、とても熱く、とても親切だった。』って。」
グイド 「その言葉、気に入った! Yさんによろしく伝えてくれ。
     なぁ、ヒロシ、俺達は、いつか必ず会うべきだ。
     ここ、おいしいエスプレッソコーヒーの国で、もう1人のヒロシ
     (Yさんのお名前もヒロシです)が来るのを待ってるぜ。」
うん、いつの日か、きっとね・・。

バリー・カップが終わり、アルプスに雪が積もる前、サン・ベルナール峠の
セント・バーナード達は、今は毎年、山を下ります。
そして、ふもとの村で春の訪れを待ちます。
                            
                                今日はここまで、またね。
(帰国後すぐに、たくさんの画像とレポートを届けて下さったYさんに感謝いたします。)
                          
                                           Beethoven









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