ベーからの手紙

No １３１．　ＪＵＬ．１１．２００７

　元気ですか？
　今日も雨が降っています。
　いつもの年なら、今頃は全身の毛をバリカンで短くカットして
　夏向きのさっぱりした姿に変身しているヨハン。
　今年は、まだフサフサと長い毛のまま。
　毎日の雨でびしょ濡れです。

２才になったアリアンナちゃんの写真が届きました。
４年前の夏にイタリアから日本へやって来たマーキュリー君の、大切なひとり娘です。
毛の感じはパパと全然違うけど、女の子としては並はずれてがっしりとした、
肩から前脚への骨組み、そしてスラリと伸びた長い脚は、まちがいなくパパゆずり。
天国のマーキュリー君は、自分の娘がこんなに大きくなったのを見て
びっくりしてるかな。
まさか、君があんなにも突然旅立ってしまうとは思わなかったから、
君がもういないという実感がまだわかない。
今でも、愛嬌のある顔の君の写真がひょっこり送られてくるような気がするんだ。
でも、もう１年が経ってしまうんだね。

４年前のちょうど今頃は、マーキュリー君の家族となったＹさん、そしてイタリアと、
何度もメールのやり取りをしていたっけ。
日本へ初めてイタリアからやって来ることになったセント・バーナードの子犬が、
無事に四国のＹさんの家へたどり着くためには、やっておかなくちゃいけないことが
いろいろありました。
イタリアの獣医さんからの予防接種の証明書を先に送ってもらい、日本の空港の
検疫所に、これで問題がないかどうか確認をする。
イタリアのクラブに血統書の発行を確かめ、マーキュリー君の健康診断も。
航空機の手配は？
プロの人に頼まずに自分達の手でひと仕事をなしとげたイタリアと日本の男達は、
マーキュリー君を仲立ちにして固い友情で結ばれました。

その１年後にイタリアを訪れ、マーキュリー君の世話をしてくれた仲間達と会った
Ｙさんと家族。
　「Ｙさんは、実にいい人だ。日本人がみんな、彼のような人だといいんだけどな。」
南国の開けっ広げな性格のＹさんは、イタリアの空気にもすぐになじんだみたいです。

がっしりした体格で脚の長いマーキュリー君は、繁殖者のヴィットリオさんが
期待するように、日本のセント・バーナードの女の子と結婚をして、
可愛い子供達を誕生させてくれるはずでした。
２００６年８月１２日の夕方。
日中はいつものように芝生の庭を元気に走り回り、夕食の時間。
起き上がってこないマーキュリー君をＹさんの奥さんが揺り起こそうとすると、
もうすでに、彼の体は冷たくなっていたそうです。
お医者さんである奥さんは、驚いてすぐに心臓マッサージをしましたが、
マーキュリー君の目が再び開くことはありませんでした。
用事で九州に出かけていたＹさんは、連絡を受けてとんぼ帰り。
あまりにも思いがけない、マーキュリー君との最期の対面でした。

イタリアの仲間からのメールには、「なぜ？」とか、「残念だ」という言葉は
ひとつもありませんでした。
　「マーキュリーは素晴らしい家族に出会った。　私はただ、
　　Ｙさんファミリーがマーキュリーを気に入ってくれていたことを祈るのみだ。」

マーキュリー君は、１度だけ結婚をしました。
何頭もの子犬が生まれたんだけど、ほんの小さな子供達は、初めての出産をした
お母さんの重い体におしつぶされてしまい、元気に成長したのは
ただ１頭の女の子だけでした。
Ｙさんは、その子にマーキュリーのお母さんの名前をつけました。
　「アリアンナ・・・素晴らしい名をつけてくれた。」
イタリアの仲間は、もちろん大喜び。
むせび泣きをするマルコさんの姿が目に浮かびます。

そのアリアンナも、２才になりました。
　「アリアンナは、叔母さん、つまり私のマチルダに実によく似ている。
　　顔つきなんか、そっくりだね。　それに、脚が長いじゃないか。」
マーキュリー君と一緒に生まれたマチルダちゃんと暮らしているグイドさんは、
遠く離れた日本生まれのかわいい姪っ子に目を細めます。

今年の秋、９月８日と９日に、スイス・アルプスのサン・ベルナール峠で
第２回バーリー・カップ（セント・バーナードの故郷でのドッグショー）が開かれます。
　「ここ数ヶ月、私はＡＩＳＢ（イタリア・セント・バーナード・クラブ）の用事で
　　出かけてばかり。　いつもヘトヘトに疲れている。自分の時間が全然ないんだ。
　　ＡＩＳＢが、早く私の代わりを見つけてくれることを願うしかない。」

グイドさん、大丈夫？　手伝ってあげたいけど、僕達には何もできない。
どうか、奥さんとエドアルド君、そしてマチルダちゃんの笑顔を忘れないで！
日本にいる、イタリアの血をひくアリアンナちゃんのことも。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　今日はここまで、またね。　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　Ｂｅｅｔｈｏｖｅｎ

わたくしは、ヨハンであります

マチルダにそっくり！とグイドさんが驚きました

よく食べ、よく動き、甘えん坊のアリアンナ

パパ・マーキュリーゆずりのスラリとした体格

No.130 No.132

ベーからの手紙
No １３１．　ＪＵＬ．１１．２００７　元気ですか？　今日も雨が降っています。　いつもの年なら、今頃は全身の毛をバリカンで短くカットして　夏向きのさっぱりした姿に変身しているヨハン。　今年は、まだフサフサと長い毛のまま。　毎日の雨でびしょ濡れです。２才になったアリアンナちゃんの写真が届きました。４年前の夏にイタリアから日本へやって来たマーキュリー君の、大切なひとり娘です。毛の感じはパパと全然違うけど、女の子としては並はずれてがっしりとした、肩から前脚への骨組み、そしてスラリと伸びた長い脚は、まちがいなくパパゆずり。天国のマーキュリー君は、自分の娘がこんなに大きくなったのを見てびっくりしてるかな。まさか、君があんなにも突然旅立ってしまうとは思わなかったから、君がもういないという実感がまだわかない。今でも、愛嬌のある顔の君の写真がひょっこり送られてくるような気がするんだ。でも、もう１年が経ってしまうんだね。４年前のちょうど今頃は、マーキュリー君の家族となったＹさん、そしてイタリアと、何度もメールのやり取りをしていたっけ。日本へ初めてイタリアからやって来ることになったセント・バーナードの子犬が、無事に四国のＹさんの家へたどり着くためには、やっておかなくちゃいけないことがいろいろありました。イタリアの獣医さんからの予防接種の証明書を先に送ってもらい、日本の空港の検疫所に、これで問題がないかどうか確認をする。イタリアのクラブに血統書の発行を確かめ、マーキュリー君の健康診断も。航空機の手配は？プロの人に頼まずに自分達の手でひと仕事をなしとげたイタリアと日本の男達は、マーキュリー君を仲立ちにして固い友情で結ばれました。その１年後にイタリアを訪れ、マーキュリー君の世話をしてくれた仲間達と会ったＹさんと家族。　「Ｙさんは、実にいい人だ。日本人がみんな、彼のような人だといいんだけどな。」南国の開けっ広げな性格のＹさんは、イタリアの空気にもすぐになじんだみたいです。がっしりした体格で脚の長いマーキュリー君は、繁殖者のヴィットリオさんが期待するように、日本のセント・バーナードの女の子と結婚をして、可愛い子供達を誕生させてくれるはずでした。２００６年８月１２日の夕方。日中はいつものように芝生の庭を元気に走り回り、夕食の時間。起き上がってこないマーキュリー君をＹさんの奥さんが揺り起こそうとすると、もうすでに、彼の体は冷たくなっていたそうです。お医者さんである奥さんは、驚いてすぐに心臓マッサージをしましたが、マーキュリー君の目が再び開くことはありませんでした。用事で九州に出かけていたＹさんは、連絡を受けてとんぼ帰り。あまりにも思いがけない、マーキュリー君との最期の対面でした。イタリアの仲間からのメールには、「なぜ？」とか、「残念だ」という言葉はひとつもありませんでした。　「マーキュリーは素晴らしい家族に出会った。　私はただ、　　Ｙさんファミリーがマーキュリーを気に入ってくれていたことを祈るのみだ。」マーキュリー君は、１度だけ結婚をしました。何頭もの子犬が生まれたんだけど、ほんの小さな子供達は、初めての出産をしたお母さんの重い体におしつぶされてしまい、元気に成長したのはただ１頭の女の子だけでした。Ｙさんは、その子にマーキュリーのお母さんの名前をつけました。　「アリアンナ・・・素晴らしい名をつけてくれた。」イタリアの仲間は、もちろん大喜び。むせび泣きをするマルコさんの姿が目に浮かびます。そのアリアンナも、２才になりました。　「アリアンナは、叔母さん、つまり私のマチルダに実によく似ている。　　顔つきなんか、そっくりだね。　それに、脚が長いじゃないか。」マーキュリー君と一緒に生まれたマチルダちゃんと暮らしているグイドさんは、遠く離れた日本生まれのかわいい姪っ子に目を細めます。今年の秋、９月８日と９日に、スイス・アルプスのサン・ベルナール峠で第２回バーリー・カップ（セント・バーナードの故郷でのドッグショー）が開かれます。　「ここ数ヶ月、私はＡＩＳＢ（イタリア・セント・バーナード・クラブ）の用事で　　出かけてばかり。　いつもヘトヘトに疲れている。自分の時間が全然ないんだ。　　ＡＩＳＢが、早く私の代わりを見つけてくれることを願うしかない。」グイドさん、大丈夫？　手伝ってあげたいけど、僕達には何もできない。どうか、奥さんとエドアルド君、そしてマチルダちゃんの笑顔を忘れないで！日本にいる、イタリアの血をひくアリアンナちゃんのことも。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　今日はここまで、またね。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　Ｂｅｅｔｈｏｖｅｎ
わたくしは、ヨハンであります				マチルダにそっくり！とグイドさんが驚きました



よく食べ、よく動き、甘えん坊のアリアンナ				パパ・マーキュリーゆずりのスラリとした体格