No.148 2010年8月23日
元気ですか?
とにかく暑い! まだまだ暑いですね。
2代目のベートーベン、僕の地上での時間が止まった年も
暑い日がいつまでも続いていました。
去年、ヨハンの時間が突然止まった夏も暑かったですね。
でも今年は、梅雨の季節からずっと、いつまでも暑い。
僕らの元気な妹、バナ子は夏バテしていないかな?
・・・あ! あ! あ! 大変だ! バナ子、止まるんだ!
パパと散歩に出発したはずのバナ子が、目をまん丸にして、口を大きく開けて
反対方向に向かって突然走り出しました。
パパが引き綱を握りしめて、バナ子に引っ張られるように後を追いかけて
行きます。店の前の歩道に、パパがまたがっていた自転車が横倒しに
なっています。 いったい、何が起きたんだろう?
・・・あ〜、やれやれ、そういうことか。
バナ子が突進していった相手は、向こうから歩いてきたあゆちゃんです。
飛び跳ねて全身で嬉しさを表しているバナ子は、今にもあゆちゃんに
飛びつきそう。少し前まで、お店の中で一緒にいたのに・・。
パパとバナ子の散歩は、いつも自転車です。
西公園に向かって出かけようとしたその時、後ろの方から声が聞こえました。
「バ〜ナ〜!!」
あゆちゃん、バナ子を離れたところから呼んじゃいけないってば。
バナ子の弾丸ダッシュをわかってるはずなのに。
あゆお姉ちゃんを見つけたバナ子は喜びで体が風船のようにふくらみ、
そして、わき目もふらずピューッ!と一直線に駆け出しました。
さすがのパパも、そんなバナ子を押さえ切れませんでした。
「バナ、わかった。 わかったから。」
いくらバナ子が小柄だと言っても、やはりセント・バーナードは大型犬です。
くるくる回りながらまとわりつく妹に、あゆちゃんはお手上げの様子。
「行っておいで。 バナ、散歩に行きなさい。」
さて、パパが自転車にまたがり、引き綱を持つ。
バナ子は後ろをふり向きふり向き、やがてあきらめて、しぶしぶと走り
出しました。
バナ子を、他の人がいる時や街の中で、離れた場所から呼ぶのはご法度です。
自分の名前を呼ばれたバナ子は、回りのものが何も見えなくなって、
猛スピードであっという間に走り出します。
家族めがけて一直線!!
いつかは、危うく車が行きかう国道を横切りそうな勢いでした。
西公園へ散歩に行ったバナ子とママを探しに出たあゆちゃん、国道を
はさんで向こう側にいる小柄なセント・バーナードを発見しました。
バナの名を呼んだら大変なことになるとわかっているあゆちゃんは、
大声でママを呼ぶことにしました。
「マ〜マ〜!!」
ピクン・・。 車の轟音の中で、バナ子の耳が緊張しました。
あの声は、あゆちゃんだ。 間違いない。
あそこにいる、道路の向かい側に。
バナ子はピョンピョン飛び上がります。
「まずい、危ない」と思ったあゆちゃんは、とっさに交差点へ向かって歩道を
走ります。 あゆちゃんの姿を横目で追いながら、バナ子もこちら側の
歩道を駆け出します。
交差点は赤信号。 向こう側にあゆちゃんがいる。
いらいらしながらも、バナ子は行儀よくきちんと座って待ちます。
信号が変わるのには少しフライング気味だったけれど、パッと立ち上がると
早足で横断歩道を渡ります。
「バナ!」
あゆちゃんに会えてうれしい! バナ子は、全身で喜びを表現します。
こういうタイプの子は、うちの家族にとっては初めてです。
1代目のベートーベンは家族に実に忠実な犬だったけれど、自分自身にも
厳しかったそうです。
2代目の僕は、そりゃ、あゆちゃんが生まれるまでは1人っ子で大事にされて
甘えていたけど、兄貴になってからは、自分で言うのもなんだけど家族を
守りましたよ。
ヨハンは、おっとりとやさしくて、ピンク色の綿あめみたいな男。
ちょっと後ろ足が悪くて、自分から走ることはほとんどなかったですしね。
バナ子は、ちっちゃな火の玉みたいな女の子。
うれしい時や楽しい時は顔がパーッと晴れやかになり、ピョンピョン
飛び跳ねる。 不機嫌さも隠そうとしないで、すぐに顔に出る。
駆け出す時は猛スピード。走り出したら止まらない。
つまり、犬と言ってもいろいろ、同じセント・バーナードでも性格はいろいろと
いうわけです。
バナ子もうちの家族になって1年が経ち、神経質さはすっかり姿を消しました。
でも、喜怒哀楽の激しさはそのまま。
どうやら夏バテもしないで元気でいる様子で、安心しました。
「バナ」
野太いがらがら声で呼ばれたバナ子が、びっくりした顔であゆちゃんの顔を
じーっと見ています。
あゆちゃん、夏風邪をひいて声がすっかり変わっちゃったんだ。
今日はここまで、またね。
Beethoven |