No 128. FEB.17.2007
元気ですか?
この冬には珍しく雪が降りました。
仙台で雪が積もらない冬なんて、きっと初めてです。
僕達セント・バーナードは雪の中を駆け回るのが
大好き、雪を口にほおばるのも好き。
おとなしいヨハンでも、この冬のあたたかさは
物足りないでしょうね。
僕が毎日元気にお店に来ていた頃、つまりずっと昔のことだけど、
散歩のコースは西公園から広瀬川でした。
公園の入口にある交番、その後ろにそびえて立つ大きな大きなイチョウの木、
公園いっぱいに広がるたくさんの桜の木、奥には天文台のドームが見えます。
茶屋の前を通り過ぎると左には神社の鳥居、右には野球のグラウンド。
そして、すっと左に折れて古い石の階段を下りると、夏には子供達の
歓声が聞こえてきました。
浮き輪を持って入り口で切符を買うお母さんと小さな子の姿、
フェンス越しには、プールサイドで寝そべってお日様で体を焼く人の姿が
見えます。
そして僕は、川からの風の匂いをかいで河原へ駆け下ります。
子犬の頃は、誰もいない時には水辺をジャブジャブと走らせてもらいました。
楽しかった・・。
体が大きくなったら川に入るのは禁止。
大きなセント・バーナード犬がびしょ濡れになったら、その後の手入れが大変
だからね。
見上げると、左の橋が大橋、右に見えるのが仲の瀬橋。
その真ん中に、もう1つの新しい橋が川に架けられるそうです。
電車を走らせるために。
見慣れた風景が、この頃急に変わってきています。
西公園をブルドーザーが動き回り、グラウンドのフェンスを壊します。
ネットを張りめぐらせてあった高い支柱も、ペンキがはがれていた
古いスコアボードも、みんな姿を消してしまいました。
1年中、桜の木達を見守っていた天文台とも、今年の秋にはお別れです。
川沿いの市民プールは、「長い間ありがとうございました」という1枚の
貼り紙でひっそりとしています。
おばあちゃんと小さなあゆちゃんが笑顔で遊んだ幼児用プールの
すべり台には、枯葉がたまっています。
そして川の向こう側の景色も、同じように姿を変えていきます。
僕が足を運んだ頃の川の向こうの呼び名は「スポーツセンター前広場」。
ドッグショーの審査員の前で何度も走った場所です。
数10頭のセント・バーナード犬が集まったこともありました。
仙台市の動物フェスティバルが開かれた時は、広場いっぱいの大勢の人に
見つめられながらショーのポーズを決めたものでした。
今、毎日少しずつ取り壊されて崩れていくスポーツセンターの建物。
広瀬川を渡った電車は、ここで停まります。「国際センター駅」。
そしてここから右へ進むと、仙台二高という男の子だけが通う高校が
あります。つい先日、20人位の女の子が「推薦入学」というのに合格して
新聞に記事が載っていたそうです。
春から、女の子も入学できる学校になるんですね。
もう少し道を先へ行って左へ曲がると、ママのお姉さんとママが通った
女子高が見えてきます。
この学校にも、もうじき男の子が入学できるようになるんだって。
だから、学校の名前も新しくなるそうです。
西公園のグラウンドから歩道橋を渡った向こうには、なつかしい建物が
まだ残っています。
今はもう使われていない図書館。
歩道橋を上り下りして、あゆちゃん・ひろちゃんと一緒にここに散歩に
来たこともあります。
「ビル全体がガラス張りの今のまぶしい図書館よりも、
私は昔の方が好きだったな。本に囲まれて、本の匂いがして、
落ち着いたのよね。」
小さい頃から本を読むのが好きで古い図書館によく通ったあゆちゃんは
こう言います。
1代目のベートーベン、2代目の僕、そしてヨハンが卒業した訓練所が
創られてから60年、というパーティーが1週間前に開かれました。
うちのお店は、今年の夏で25年目に入ります。
これだけの時間が流れれば、いろんなものが、いろんなことが
変わっていくのは当然なんですよね。
そうとわかっていても、うちの家族は寂しい気持ちがこみ上げてくる
みたいです。
春になると、まぶしいくらいに美しい年を取った桜の木、
試合をするリトルリーグの男の子達の「リー!リー!」という元気いっぱいの
かけ声、静かな広瀬川のせせらぎ。
長い間、当たり前のようにここにあった古いもの達が、少しずつ姿を
消していきます。
ヨハンがうちの家族になってからだって、もう5年が経つんです。
ヨハンも、もうすぐ8才です。
顔にはずいぶん白髪が目立つようになりました。
うちに来てから足腰は結構たくましくなったけど、性格も変わったと思います。
「最初の頃は人の顔色をうかがって遠慮がちで、素直だったのに、
なに?今は。 たたいても起きない、わがままで自分中心!」
あ、そりゃ、うちの家族そのままじゃないか。
今日はここまで、またね。
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