ベーからの手紙      

No.136  2008年9月9日

 
 元気ですか?
 今年の夏は、じめじめ、じとじと、と蒸し暑い毎日。
 僕たち犬にとっては乗り切るのがつらい季節でした。
 9才半のヨハンは、目に見えて体力が落ちて
 しまいました。
 
                    
 僕が年を取って後ろ足をひきずるようになったのは、いったい何才頃
 だったんだろう。
 どうしても足に力が入らなくなり、ずるずると引きずって歩きました。
 そのうちに足に血がにじむようになり、爪が根元までけずれました。
 毎日、両後ろ足の爪を薬で固め、お手製の革靴をはいて紐をしめる。
 これが、僕が年を取ってからの散歩に出かける準備でした。
 14才を過ぎてほとんど歩く力がなくなるまで、何足も何足も
 手縫いの靴をはきつぶしました。

 9才の頃の僕はまだまだ元気に歩き回っていた記憶があるけど、
 ヨハンは、外に出るよりもひたすら寝ている方がいいみたいですね。
 ちょっと無理をしてでも毎日歩き続けないと、足や腰の筋肉は
 どんどん弱くなっちゃうのになぁ。
 今日は少し涼しいから、筋力がなくなってきたヨハンの後ろ足を
 鍛えるために、いつもよりも散歩の距離を伸ばしてみようか。
 毎年、暑い夏の散歩コースは大橋の手前でUターンします。
 でも、今日は気温が低い。
 ヨハン、大橋を渡って国際センターまで歩こう。

 ママは、橋へ向かってまっすぐに歩きます。
 ところが、大橋のすぐ手前でヨハンはピタリと足を止めました。
 そして、露骨にいやぁな顔をしてみせました。
 その顔は、こう言ってます。
  「え? そっちに行くの? やだな。僕は、いつも通りの道でいい。」
 そして右へ方向転換、素知らぬ顔でゆっくりといつもの道筋へ
 足を進めます。
 ママは、やれやれとため息。しかたなく、自分も右へ曲がります。
 まぁ、そりゃ、無理をして長い距離を歩いて、帰り道でふらふらになって
 戻れなくなったら大変だけど、ヨハンが不精なのも確かなんじゃないかと
 僕は思うんですけどね。

 僕の体の衰えが後ろ足から始まったのに対して、ヨハンは、どうもこの頃
 前足の痛みがひどいみたいです。
 2才で我が家にやってきた時の若々しいヨハンは、後ろ足をヒョコヒョコと
 かばうようなおかしな歩き方をしていました。
 でも、雨の日も雪の日も毎日歩き続けて少しずつ体を鍛えていくうちに、
 見違えるようにたくましくなり、後ろ足の動きもきれいに変わって
 いきました。
 年齢と共にヨハンが気にするようになってきたのは、前足の裏側です。
 指と指の間の裏側に元々大きなふくらみがあり、地面に足を着くと
 それが痛むのでしょう。
 前足を持ち上げて裏をのぞいてみると、あぁ、傷ついてる。
 これじゃあ、確かに歩くのがいやになる気持ちもわかるな。
 ヨハンも、いずれ靴をはいて歩く日がくるんでしょうね。

 とにかく、歩けるうちには歩いておかなくちゃ。
  「僕はいいよ。 寝ている方が好きだからさ。」
 ヨハンのこんな声が聞こえてきそうだけどね。
 
 おや、そういえば、今日は9月9日。 僕の命日じゃないですか。


                            今日はここまで、またね。 
                                 Beethoven

通い慣れた道も、年を取ると遠くなります

ハトの群れもネコもいなくなった西公園

ヨハンも祈ります。 厄除け祈願!

交差点から見るケヤキが伐採された青葉通り
No.135 No.137