ベーからの手紙      

No 122.MAR.30. 2006.


元気ですか?
春になりましたね。
悲しいことやつらいことがあっても、いつのまにか、
黄色やピンクや紫、新しい花達が咲いて、
明るい季節がやって来ます。
我が家にも、明るい話題が飛び込んできました。

 
子供を残すことができなかった、1代目のベートーベンと2代目の僕。
そして、2才9ヶ月で家族の仲間入りをしたヨハン。
「ヨハン」は、作曲家ベートーベンのお父さんの名前です。
将来、ヨハンに子供が生まれたら、その子に3代目ベートーベンを襲名させよう、
と僕の家族は考えました。
でも、いつのまにか4年以上の月日が流れ、ヨハンも男盛りの年齢を
過ぎてしまいました。
女の子には興味がなく、眠ることが大好き、のんびり屋のヨハンは、
3月で7才の誕生日を迎えました。

3月の半ば、訓練所からお店に電話がかかってきました。
 「ヨハンを貸してくれ。」  「え?」
 「交配するから。」  
ええ!? つまり、ヨハンが結婚、するわけですね?
おや、せっかくのこのニュースにパパは複雑な表情をしています。
 「どうかなぁ。 ヨハンには無理だと思うけどなぁ。 あいつ、ウブですよ。」
 「そんなことないだろう。 男だぞ。」
 「う〜ん・・・。」
パパは普段のおっとりしたヨハンの様子から、この見合い話がうまくいくかどうか
不安を感じているようです。

もう1つの気がかりは、ヨハンの年齢です。
体の大きなセント・バーナード犬は、あまり長生きをすることができません。
僕達の7才は、人間で言えば50代くらいかな。
ヨハンは、この年まで女の子のことを何も知らずに独身で過ごしてきました。
それがある日突然、見合い、すぐに結婚なんて大丈夫なんだろうか?

でも遅咲きの結婚話に、家族みんなの期待はふくらみました。
 「ヨハンの赤ちゃん? 子犬、見たい!」

金曜日の朝、再び訓練所からの電話。
 「昼過ぎにヨハンを迎えに行くぞ。」
さぁ、来た! いよいよ呼び出しがかかりました。
 「念には念を入れて何度か挑戦させる。
  それでだめだったら、病院へ連れて行って人工受精する。
  日曜の午後まで、こっちで預かろう。」
これから、急な2泊3日の新婚旅行。
ヨハンは何も知らずに、いつも通り寝ています。
お見合いの相手は、いったいどんな子なんだろう?
パパとママに緊張が走ります。
だって、ヨハンの子供を残せるかもしれないんですよ。
3代目のベートーベン!

午後1時半。 訓練所から迎えの車が来ました。
ヨハンが車に乗り込みました。  健闘を祈る! 

寝そべるヨハンがいない、ポッカリと静かな階段の踊り場。
日曜日まで、ヨハンはいません。

その日の午後3時半。  電話のベルが鳴りました。
 「ヨハンを返すぞ。」  「え・・・!?」
 「だめだ。 全然役に立たない。 その気にならない。
  病院に連れて行ったけど、それでもだめだ。
  まったく、子犬を1頭残してやろうと思ったのにしょうがないな。
  これからそっちに連れて行く。」
・・・・・・・・・・・・・。
あぁ、ヨハン、やっぱり、だめだったか・・。
それにしても、2泊3日の予定で出かけたのに、たったの2時間で
帰されるとは情けない。
これで、ヨハンが子供を残す望みは残念ながらなくなりました。

夕方。 安心しきった顔で眠るヨハンの姿が階段の踊り場にありました。
そう、君には、こうやってのんびり過ごすのが1番似合ってるんだね。
きっと、長生きするよ。

うれしいニュースもあります。
あゆちゃんが大学生になることが決まりました。
ママのお姉さんが亡くなった後、去年の12月、マンションの引越を手伝うために
あゆちゃんも東京に出かけたりしていたから、もし希望がかなわなかったら、
ママはちょっぴり責任を感じていたかもしれません。
 「今だから言えるけどさ、私、よく合格したよね〜。」
あゆちゃんもきっと長生きをする、と僕は思います。

                             今日はここまで、またね。
                          
                                      Beethoven

国際センターのガラスのドア

広瀬川にかかる大橋・青葉通りに続きます

3代目ベートーベンは遠くに消えました
「車の免許を取りたいな」「僕も乗せてね」
No.121 No.123