ベーからの手紙      

No 130. MAY.12.2007


 
 元気ですか?
 家の裏の林の奥から、朝早く、こんな音が響いてきます。
 コンコンコン! ココン、コンコン!
 キツツキが朝食の虫を探しています。
 夜になると、今度はにぎやかな合唱が響きます。
 ゲロッ、ゲロッ、ゲコゲコゲコ、ゲコッ!
          そして、ヨハンの高いびきがカエル達の仲間に加わります。
             グゴゴゴーッ!!


5月の連休は、山形県の東根市へ家族で行ってきました。
去年から、おじいちゃんが自分の足で歩ける元気なうちにと、昔、おじいちゃんが
転勤で過ごした町を訪ねているんです。
多賀城の町で昔住んでた所、おじいちゃんが仕事をしていた所へも行ってみました。
1年前の5月は、青森へ行ってきました。
今回は、ママのお姉さんとママがまだ幼い頃に8ヶ月間を過ごした東根です。

関山(せきやま)峠という山を越えると、お隣の山形県。
かつて住んでいた場所を探して走る道の両側には、きれいな白い花を咲かせている
たくさんの木が見えます。サクランボとリンゴの木だそうです。
濃いピンクの花はモモ、背が低い木はブドウ、あちらこちらに果物の木が広がります。
そして突然、見事な、長い長い1本道の桜並木が目の前に現われました。
 「ここだ。」 おじいちゃんが窓の外に目を向けました。
桜並木の向こうは、見晴らしのいい広々とした空き地。
この空き地に、昔ママ達が暮らした家があったそうです。
1軒1軒の家は離れていて、家の回りは広い草地。
玄関のドアを開けるとホール、そして2階へ続く長い階段、高い天井、広い台所。
体の小さなおばあちゃんは、踏み台に上がってお料理をしたんだって。
ここは、アメリカ軍の家族の人達が生活をしていた家だったそうです。
家の前の草の上で寝そべって遊んだり、家の中で走り回ったり・・。
外国のテレビドラマに出てくるような広くて素敵な家だったけれど、あんまり広くて、
すごく天井が高くて、雪が積もる冬には、ママとお姉さんは家の中でも
「寒い、寒い」と着ぶくれていたって。

その家があった向こうに、お椀を伏せたような姿のこんもりとした、かわいらしい山が
見えます。ピンクの花できれいに彩られています。たぶん、山桜かな。
童話に出てきそうなあの山の名前は、「若木(おさなぎ)山」。
ここに住んでいた頃は、家族で何度もこの山に登ったそうです。
ママのお姉さんは、長い間の夢だった児童文学の翻訳家としてデビューすることが
決まった時、思い出の中の美しい山の名前を最初のペンネームにしました。
  「若木(おさなぎ) ひとみ」
青空の下で、美しい木々に囲まれている若木山はニコニコと笑っているように
見えました。
そして、桜並木から奥へ行くと・・・なんて美しいんだろう!
どこまでも、どこまでも、どこまでも、真っ白な花、花、花。
車でどんどん走り続けても、どこまでも当たり一面の白い花。
リンゴとサクランボの花が真っ盛りです。
東根で過ごした子供時代はたった8ヶ月という短い間だったけれど、お姉さんの
心には、忘れられない美しい山と花の風景が残ったんだろうな。

お姉さんが翻訳をするために自分で選んだ外国の本に、自然を愛し、大切にする
心が流れているお話が多いのは、子供の頃に夏を過ごした会津の、どっしりと人を
包みこむような豊かな自然、東根の広々とした花いっぱいの風景、中学時代に
家の前から毎朝眺めた青森の雄大な山、そして、おじいちゃんとおばあちゃんが、
どこへ引越しても必ず作っていた、バラやダリア、グラジオラス、アジサイ、キキョウ・・
たくさんの花があふれていた見事な花壇、それらの美しさを大切にしていたんだと
思います。

今回の東根への旅は、とても道が混んでいて大変だったけれど、温泉の入り口にある
大きな釜に卵を入れて「温泉たまご」を作ったり、散歩の途中で、足だけ温泉に
ひたれる「足湯」であったまったり、楽しい休日でした。
でも、ヨハンはずいぶんと年を取ったな、と思います。
1年前に青森へ行った時はまだまだ元気だったのに、今年は帰ってきてから
いつまでも疲れが抜けないらしく、1日中、眠り続けています。
めっきり白髪が増えた疲れきったような寝顔を見ていると、ちょっぴり寂しくなるな。

                      今日はここまで、またね。

 追伸  前回の手紙でお話したセント・バーナードの子犬の女の子、残念ながら
      家族として迎えてくれる人達には、まだめぐり会っていません。
      あのご主人は、反対していた奥さんを説得できなかったのかなぁ。
      うちの家族は、訓練所に出かけた時に、またあの子犬に会う楽しみが
      できたって喜んでいるけどね。                            
                                Beethoven

足湯の前 右奥の電光掲示が温泉の温度

なつかしいポストが現役で活躍しています

ここは毎朝の散歩道  鳥の声が聞こえます

水バショウが咲く水辺は涼しげです
No.129 No.131