ベーからの手紙      

No 124.JUN.28.2006.


元気ですか?
 暑い、暑い。
 駆け回ったりすることのない、元々がのんびり屋の
 ヨハンは、こう暑いとますますのんびり、寝てばかり。
 家族が声をかけても、耳が悪いのをいいことに知らんぷりを
 決めこんでいます。


 さて、久しぶりにイタリアからの郵便が配達されました。
AISB(イタリア・セント・バーナード・クラブ)のマークが入った封筒。
何かあったんだろうか?
実はこの頃、イタリアとの連絡が、どうもうまくいってませんでした。
去年の暮れの、グイドさん(AISBマガジン編集長)からの1年を締めくくるメールに、
こんな文がありました。
 「今年は、AISBにとって大変な1年だった。とてもつらかった。」
どうやら、クラブの中で「内紛」というのが起きたらしいけど(よくある話ですね)、
グイドさんはくわしいことは言いませんでした。
グイドさん自身にも、大きな変化があったんです。
今までの仕事を辞めて、新しい仕事を見つけなくてはいけなくなったそうです。
 「週末以外は、家族と遠く離れている。新しい仕事が決まるかどうかは、
  まだわからないんだ。」
息子のエドアルド君はまだ小さいし、グイドさん、きっと大変だろうな。
マーキュリー君と一緒に生まれたマチルダちゃんは、どうしているだろう?

 ちょっと不安になりながら届いた封筒を開けてみると・・、
1枚のカードが入っていました。 きれいなカードには、パパの名前と住所。
手紙には、イタリア語でこう書いてあります。
 「イタリア・セント・バーナード・クラブから、名誉会員証をお送りします。」
そして、クラブ会長のボノーミさんのサイン。
名誉会員! やっと届いたんだ。 もう、すっかり忘れていたのに!
だって、AISBの役員会議で、僕のパパを名誉会員にする、というグイドさんの
提案が全会一致で可決されたのは、3年半も前のこと。
みんなで承認の拍手をして、そして・・それっきり忘れちゃったんだろうなって、
すっかりあきらめてました。
たった1枚のカードだけど、なんて重みがあるんだろう。
会議決定から3年半もかけて日本に届いてくれたんだから。
パパは、この名誉会員証をお店のショーケースに飾りました。
うれしいニュースでよかった。

 でも、イタリアのことではもう1つ、ずっと気になっていることがあるんです。
去年、日本のセント・バーナードの飼い主さん達がイタリアに注文した樽が、
まだ届かないんです。
パパは、忙しいグイドさんを気遣いながらも、何度も連絡を取り続けました。
イタリアの樽は、順に3人の男の人が作業をして仕上げていきます。
木を彫る人、金具を取り付ける人、そして最後に革細工を取り付ける人が、
注文先へ送る役目も持っています。
 「実は、最後の革細工のジアンニが、奥さんに『離婚されて』しまって、
 大変なショックを受けている。彼は、遠い所へ引っ越してしまった。
 今は、あまりにも気の毒で。 すまない、待っていてくれ。」
グイドさんは、遠くに住むジアンニさんを訪ねて様子をみてきてくれました。
 「元気を出せ。 樽は、ちゃんと仕上げて送ってくれよ。」
でも長い間待っても、ジアンニさんは立ち直ることはできませんでした。

 グイドさんだって、自分の仕事のことで頭がいっぱいなんだと思います。
日本とのメールどころではないでしょう。
やがて、連絡が途絶えるようになってしまいました。
樽を注文した人達に、「3年半は待ってみて。」とは言えませんよね。
なんとかしなくちゃ。
パパは、AISBの本部に、英語で手紙とメールを送りました。
返事は、すぐに来ました。イタリア語で。
辞書で単語を1つずつ確かめて、と。
 「ご依頼の件、確かに承りました。できるだけ早く返答します。」

 そして今朝。 久しぶりのグイドさんからのメールです。
 「クラブの秘書から、君から手紙が来たと連絡があった。 
  申し訳ない。謝らなくちゃいけないね。
  クラブの重要ポストの役員が大勢、辞めてしまったんだ。
  今は、残った者達で仕事を補佐している状態だ。
  整理がつくにはまだまだ時間がかかるけど、大丈夫、必ずうまくいく。
  樽に関しても、今度こそ大丈夫だ。
  信頼できる、仕事が早い(!)人間を担当にしたからね。
  もう1度、連絡をくれ。
  Yさん(マーキュリー君の飼い主さん)の家族は、元気かい?」
ふう! やっと少し、道が拓けてきたみたいですね。
日本風に考えると、あんまり待たされてイライラしちゃうでしょうけど、
ごめんなさい、もう1度だけ、イタリアの流儀で待ってみて下さい。
 「きっと、うまくいくさ!」って。

 マーキュリー君のブリーダー(繁殖者)のヴィットリオさんは、クラブの
役員を引き受けることもなく、自分が目指す理想のセント・バーナードを
生み出す日を追いかけ続けています。
 「おお! マーキュリーはなんていい犬になったんだ!
  私がこれまで繁殖した中で最高の犬だ。驚いたね。
  いったいなぜYさんは、マーキュリーを(ドッグ)ショーに出さないんだ?
  私にとっては、(こんないい犬をショーに出さないのは)残念だ。」

いろんな人生。 いろんな国。 いろんな考え方。
大丈夫、きっと、うまくいくさ!
 
                             今日はここまで、またね。
                          
                                     Beethoven

うちにも子犬が欲しいよ!

子犬と言ったって、あっという間に大きくなる・・。

イタリア生まれのマーキュリー君

日本生まれのヨハン
No.123 No.125