ベーからの手紙      

No.103.MAY .12. 2004.


 元気ですか?
 陽射しが強くて暑いかと思うと、次の日は雨。
 そしてまた青空、お日様がジリジリ。
 こんな天気の繰り返しの今年は、竹林のタケノコ達が
 とても元気です。頭を地面からツンと突き出して、
 あっという間に大きくなります。

僕のパパは、コーヒー豆を焙(や)いて、お客様に売ることがお仕事だけど、
実は、昔からたまらなく好きな食べ物があるんです。
20年前、コーヒーの仕事をしている最中に髄膜炎という病気で倒れて入院した時も、
このパパの大好きなものを持ってお見舞いに来て下さる方もいました。
病室のベッドの上で、大きな容器を抱えて、満足そうにスプーンを口に運ぶパパ。
そして、ベッドの脇のテーブルの上のコーヒー器具一式で、
おいしいコーヒーを淹れる。
救急車で病院へ運ばれた患者なのに、信じられないよね。
ニコニコして、ベッドでアイスクリームを食べるなんて。

  「ソフトクリームの機械を店に置きたい。」
パパは、お店を始めた頃から言っていたんです。
  「だーめ。お客様に買っていただくよりも、自分で食べるために置くようなもの。」
何度ママに願い出ても、即、却下。
ここ数年は、2リットル入りのバニラアイスクリームを買って、
濃いダッチ(水出し)コーヒーをタラリとかけて食べるのが、
夕食後のパパの楽しみでした。
ソフトクリームの機械の導入はあきらめたかに思えたパパが、
1年前、今度はこう切り出しました。
  「アイスクリームメーカーの販売をしたい。」
去年は、いつまでも梅雨空のように雨が降り続き、涼しい夏でした。
ママの許可は、ひと夏、とうとう下りませんでした。
でも、そんなことではあきらめない、しつこいくらいに粘り強いのが、僕のパパ。
今年の春、気温がグングン上がって初夏のような暑さの日に、
もう1度申請を出してみました。
  「アイスクリームメーカーの販売を・・・するよ。」
  「今年は・・・・・・・いいでしょう。」

自分で作ったダッチコーヒーを練り込んだ、自分で作ったアイスクリームを
口に運ぶ時の、パパのしあわせそうな顔。
  「できたては、たまらなく、うまい!」
ダッチコーヒーをほんの少しだけ混ぜると、見た目はバニラアイスなのに、
ほんのりと甘いコーヒーの味と香りがするんだって。
それでは、今度はダッチをたっぷりにしてみると・・、これは濃厚な大人の味。
まずバニラアイスを作って、その上にダッチコーヒーをかけると、
これまた違った味で捨てがたい。
コーヒーでも、僕達犬のことでも、音楽でも、そしてアイスクリームでも、
凝り出すと、とことんのめりこむ人なんです、僕のパパは。

 「犬に余計なおやつは、よくない。」と僕には厳しかったパパ。
それなのにヨハンには、こっそりアイスクリームの分け前が届きます。
 「年を取ってからできた子は可愛いって言うけど、
  その気持ちなぜか、わかるんだよな。」

                                  今日はここまで、またね。
                          
                                                 Beethoven
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