No.134 2008年2月19日
元気ですか?
お店の近くの交差点の角にあった大町交番の建物が、
跡形もなく姿を消してしまいました。
交番の奥にあった天文台のドームも、取り壊されて
ガレキの山になりました。
たくさんの桜の木も消えて、今は、ダンプカーが
ひっきりなしに西公園を出入りしています。
毎日散歩をした公園に、もう昔のおもかげはありません。
この前の土曜の夕方、昔、学生時代にお店のアルバイトをしてくれていた、そして
僕と一緒に西公園を歩いてくれたお兄ちゃん達がやって来ました。
大学に入学してすぐに、お客様としてうちの店へ入ってきたのが今村お兄ちゃん。
今村お兄ちゃんと同じクラスで出席番号が隣同士だったのが、僕と1番の友達に
なった阿部お兄ちゃん。それから、クラブの仲間、後輩、とアルバイトを
受け継いでくれたんです。
「お店の25周年のお祝いをしましょう。」とお兄ちゃんが言ってくれたのは
去年のこと。 去年の8月、うちの店は25回目の誕生日を迎えていました。
みんながいろいろと忙しくて、ようやく集まることになったのは、とても寒い2月の夜。
「25周年、おめでとうございます。」
差し出された花束を、パパは少し照れくさそうに受け取りました。
記念のプレゼントにお兄ちゃん達が選んでくれたのは、美しい模様が描いてある、
薄いガラスの壺、イタリアで作られた古いガラス細工です。
イタリアでは、キャンディーを入れていたそうです。
片手に花束、もう片方にガラスの壺をそっと大事に抱えたパパを、
お兄ちゃんがカメラで写します。
寒い夜道をみんなが向かったのは、昔、お店が終わってから何度か足を運んだ
ことがある、大学の片平キャンパスの近くの居酒屋です。
今夜は、お兄ちゃん達はビールの大ジョッキ、車を運転するパパはヨーグルト
ドリンク、20才になったあゆちゃんはカクテル、ひろちゃんはコーラ、そして
ママは酎ハイで、肩を寄せ合って乾杯!
「ベートーベン、25周年おめでとう!」
実はこの居酒屋に、僕も1度だけ来たことがあるんです。
生まれてからまだ2ヶ月しかたっていない、ほんの小さな子犬だった時、
ママのジャンパーのふところにもぐりこんで、一緒にここへ入ったんだって。
赤ん坊の僕はぐっすり眠っていたし、もちろん何も覚えていないけどね。
大学生だったお兄ちゃんにオムツを交換してもらったこともあるあゆちゃんが、
おいしそうにお酒を飲みます。
「はい、お待たせしましたぁ。」 「あれ?」
次々と料理を運んでくる居酒屋のアルバイトの女の人の顔を、あゆちゃんが
不思議そうな表情で見ています。
あゆちゃんの顔を見つめ返したその人も、「あ!」
2人は、小学校と中学校が一緒の同級生でした。
「ご家族? そうか、ベートーベンだ。」
はい、そうです。なつかしいこの居酒屋で、25周年のお祝いをしています。
さて、次の日。
記念の品としていただいたイタリアのガラスの壺を前に、ママは考えこみました。
とても薄いガラスだから、そのへんに置いたらすぐに割れてしまいそうで恐い。
水を入れて花びんにするのも申し訳ない。
さて、さて、どうしよう。
お店で誰も触わることができない安全な場所は・・・ショーケースの中。
でも、ショーケースはセント・バーナードの置物やぬいぐるみがいっぱいで
もうスペースがない。
ママは、小さなセント・バーナード達にちょっと場所をつめてもらって
ガラスの壺をショーケースに置くと、ぬいぐるみを1つ、壺の中に入れました。
うん、これで、よし。
イタリアの壺も、僕達の仲間になってきっと満足してくれてるでしょう。
そうそう、ヨハンのことを忘れていました。
土曜日の夕方、大好きなお兄ちゃんにたくさんお腹をなでてもらって喜んだ
ヨハンは、みんなが居酒屋で騒いでいる間、駐車場の車の中でぐっすり眠って
待っていました。
お兄ちゃん達が学生だった頃の僕と同じようにね。
今日はここまで、またね。
Beethoven |