ベーからの手紙      

No.113.JAN .14. 2005.


 
元気ですか?
寒い日が続きますね。
新しい年になってから、雪がたくさん降ります。
パパはお店が休みの日も、雪が積もると店の前の雪かきを
するために出かけて行きます。
今日、仙台は「どんと祭」、お正月の飾りを焼きます。

パパとママがうちの店を始めてから、今は22年目です。
新しいお客様が来て下さると、うれしくなります。
仙台の大学で勉強するために遠くからやって来た学生さん、
 ていねいに頭を下げて、とても礼儀正しいですね。
お仕事の転勤で家族で仙台へいらした方は、
 「仙台はいい街だと聞いています。」
ずっと仙台で暮らしていて、「いつかベートーベンで買ってみたいと思っては
いたんだけど、今日、初めて来ました。」と足を運んで下さる方・・・。

お店を開いてからの長い年月、ずっと通い続けて下さっている方達の
お顔を見ると、やっぱり、とてもうれしくなります。
結婚する前から来て下さって、今はお子さんが中学生や高校生、という
お客様がたくさんいます。
ベートーベンの店に初めて来た時は大学生、そして今は、学校の先生や
お医者さん、海外を飛び回る技術者や研究者・・。
大学を卒業してから、みんな活躍してるんですね。

悲しい知らせにも、時々出会います。
 「いつも一緒に買いに来ていた方ね、突然亡くなられたんですよ。」
とても、はつらつとしたおばあちゃんでした。
 「親戚の葬儀に参列したら、代表で挨拶した孫が、『祖父はベートーベンの
  コーヒーが大好きでした。みなさんにもコーヒーをご用意しましたので、
  祖父のためにお飲みになって下さい。』って。」
いったい、どの方なんだろう・・。

お店を始めてからも20年以上かかさず、毎年暮れになると、遠くに住む
なつかしい仲間から荷物が(おいしいものが、ね)届きます。
僕がドッグショーで活躍していた頃、セント・バーナードの魅力を
一緒に追い求めた方達です。
仙台に住むHさんご夫妻とも、その頃からのお付き合いが今も変わらずに
続いています。
Hさんは、恐らく日本で初めて、ご自分のセント・バーナードを訓練された方です。
パパが突然会社を辞めて店を開くことになった22年前、
大きな会社の常務さんだったHさんと奥さんは、開店の準備で大忙しの店に
顔を出して下さいました。
そしてお2人で、コーヒー豆の1粒ずつの選別の仕事を始められました。
とても料理が上手な奥さんは、あったかいオニギリとお新香の包みを
パパとママにそっと差し出して、「忙しくても食べなきゃね。」
そして、お裁縫のセットをママに手渡すと、
 「必要な時もあるでしょう。これ、持ってて。」
その裁縫セットは、今も店で活躍しています。

え? ところで、どうしてうちのパパは、突然会社を辞めてしまったのか、
ですって?
そうですねぇ・・。 20年以上も前の話ですから、もうお話してもいいでしょうねぇ。

その頃パパは、会社の「新しい事業企画のコンクール」に応募して
選ばれたり、と積極的に仕事をしていたそうです。
でもある日、パパは会社の「直属の上司」という人に呼び出されました。
そして、「おまえとは、どうしても合わない。会社を辞めろ。」と
迫られたんですって。
その人にとって、パパは「目の上のたんこぶ」だったみたいですね。
パパは黙って、辞表を提出しました。
 「これは預かるから。」と、会社の偉い方達が引き止めて下さったそうだけど、
パパは、「彼と一緒に仕事をすることはできない。」と立ち去りました。
それからまもなく、その「上司」が、会社でやってはいけないこと、
不祥事というのが発覚して会社をクビになった、と話を聞きました。
この時から、パパは自分に言い聞かせています。
 「絶対に人を陥れようとしてはいけない。
  いつか必ず、自分にめぐってくるものだから。」

思いがけないきっかけでスタートしたベートーベンの店は、
たくさんの人々に支えられ、たくさんの人々の人生に囲まれながら、
22年目の道をゆっくり歩いています。
店の看板犬は、ヨハンで3代目。 そのヨハンも、3月で6才になります。

                                今日はここまで、またね。
                          
                                        Beethoven




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