イタリア国際セント・バーナード協会報
    AISB Informa (『AISBがお知らせします』)
           2002年4月号 第11刊

 
 2002年4月発行のイタリアのセント・バーナードクラブマガジンに、
 「日本のセント・バーナード」についての記事が掲載されました。
 (「ベーからの手紙」No.43とNo.55をご参照下さい。)
 日本から英語でお送りした文を元に、クラブの編集者、グイド・ザネッラ氏が
 イタリア語で執筆したしたものを日本語に訳していただきました。
 文中、年号はごちらから送った原文に誤りがありましたので、
 
として訂正してあります。
 また、こちらから送った原文と執筆者の表現の内容に異なる部分がありましたので、
 注釈をつけました。何ヶ所か,話の流れをよりご理解いただくために補足説明も書き加えました。
 イタリア語のニュアンスをお伝えするために、
訳者による注もついています。
 (訳者の高梨光正氏は、仙台での学生時代に「ベートーベン」でアルバイトを
  して下さった方です。氏の快いご協力に深く感謝いたします。)
               

 

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   グイド・ザネッラ 文 / 高梨 光正 訳

   

 仙台市のイタリア代表チームのキャンプ「カーサ・アズーリ」

日本におけるセント・バーナードに関する情報を調査・収集すべしという極めて難 し い任務を
遂行するにあたり、私を助けてくれたのがイシハマ・ヒロシさんという仙 台市の方でした。
仙台市は、日本の東北地方の、海に近い、人口約百万人の都市で す。
偶然にも、仙台市は、6月からイタリアの代表チームのキャンプ地として、チーム の
拠点「カーサ・アズーリ」を準備している街でした。仙台市民は、他の多くの日本人
もそうですが、非常にイタリアのサッカーを愛しており、「アズーリ」のファンクラブを
設立するほどまでに、今か今かと、トラパット−ニ・チームの到着を首を長く し て待っています。
このページにイタリア代表チームの歓迎ステッカーを掲載しておき ます。
好意的な受け入れ態勢が試合に挑むにあたって、チームのメンバーたちに確実 に
影響するものであるならば、我らがチームにとって他によいキャンプ地はあり得な い、
と私は確信しています。
我々は、本誌を数部仙台に送る予定でいます。
仙台で は、我が友ヒロシがイタリアチームのキャンプに配送してくれることになっています。

チームの誰かがこの記事を読んでくれることを願いつつ、1982年スペイン大会以来の優 勝が
再び訪れるよう、チームのみなさんに心よりの健闘を祈ります。
頑張れ、アッズーリ!

ともあれ、イシハマ・ヒロシさんをめぐって、非常に興味深い話がありますので、
是 非ご紹介しようと思います。


「どうやら、ベートーベンはカリフォルニア生まれではなさそう・・・」
     
イシハマヒロシさんはセント・バーナードの飼い主で、20年来その魅力にとりつかれています。
職業は、仙台でコーヒー豆やその類を販売するユニークなお店を経営しています。
このお店は(左にそのお店のショーウィンドウの写真をご覧いただけます。)、
その名も「ベートーベン」といい、その商標にはセント・バーナードの顔が使われています。
お店に初めてくるお客さん誰しもが考えるように、みなさんもこうお思いになるでしょう。
「まあ、ここにもあの有名なアメリカ映画に影響を受けた人がいる!」
「違うんですよ!」と、幾度となく繰り返さざるを得ないのにも、ヒロシはいい加減飽き飽きしています。
実際のところ,興味深いのは、あのベートーベンの第1作が映画館で封切られたのは
1993年のことですが、ヒロシがお店を開店したのが、1982年(
 正しくは1983年)で、
10年も前のこと。これは嘘じゃありません。
しかもお店の名前は、1978年(
 正しくは1979年)以来ずっと「ベートーベン」の名で呼ばれている
イシハマ家のセント・バーナードの名前からとられたものなのです。
これはただの偶然か、それとも何か関係が?

詳しくは知りませんが、両者の共通点や歴史・地理的な関係などが全くないことを考えあわせると、
誰でも彼でもがセント・バーナードとドイツの偉大な音楽家の名前を結びつけようなどという、
おかしな考えをもつとは思えません。とすれば、何か理由があるはずです。
1989年に、とあるアメリカ人のジャズピアニストがコンサートで来日し、
その折りに「コーヒー豆屋ベートーベン」に立ち寄りました。
そこで彼は「べートーベン」という名のセント・バーナードと出会い、ヒロシと友情を結んだのでした。
このピアニストはコーヒー豆を何袋か買い求め、ついでに商標のついたTシャツを買い求めて、
それをアメリカに持ち帰ったのです。
 このアメリカ人ピアニストは、ボブ・ジェームス氏です。
   事実は、彼は水出しコーヒーの器具を買い求めて下さり、ベートーベンから商標のついた
    トレーナーをプレゼントしました。
   彼との再会については、「ベーからの手紙」No.67 をご参照下さい。)

その3年以上後、ユニヴァーサル・ピクチャーズが研究の末、誰もが知るあの映画が封切られたのです。
あのアメリカ人のピアニストはヒロシに手紙の中で、映画関係の仕事をしている友人たちに、
日本にいる「ベートーベン」という名のセント・バーナードの話をしたと書いてきました。
彼ははっきりと認めたわけではないのですが、彼の友人たちが何らかの方法で、
あのアメリカの巨大な映画会社に、こうしたアイデア(=セント・バーナードとベートーベンを
結びつけるという考え/
訳者注)を提案したのではないか、という疑問が残ります。

で、事実、まもなく小さなヒロシと巨大なユニヴァーサルの間に、東京地裁での訴訟問題が
持ち上がりました。つまり、ユニヴァーサルはセント・バーナードと結びついた
「ベートーベン」という名の映画から上がる利益に派生する諸々の利権の世界的所有者
であったからです。
訴訟が起こされると、あのアメリカ人のピアニストは日本の友とのあらゆる連絡を拒否しました。
 訴訟という性格上、日本の弁護士事務所から、本人の自宅ではなく事務所へ文書を
    お送りしました。しかし、今年、2002年9月14日の再会での彼の様子から、
   事務所は本人に何も伝えていなかった、と推測されました。
   私達もこの件に一切触れることはせず、楽しい再会を喜び合いました。)
ユニヴァーサル側の3人の弁護士は、法廷において、仙台のコーヒー店の名前などは
誰も知らないが、今や映画については世界中の人が知っている、
という立場からユニヴァーサル弁護の論陣を張りました。
 「『ベートーベン』という店は仙台においてすら認知されていない。
    よって我々は、その存在を認めない。」とユニヴァーサル側は主張しました。)
それに加えてこれらの弁護士が言うには(ここには「けしからん弁護士」というニュアンスが
含まれています/
訳者注)、間接的に映画が店にあたえた宣伝効果に対し、ヒロシは感謝
すべきである、と。
こうした局面にあって、地方紙に掲載されたお店の広告が、1993年に(まさに映画封切りの年に)
仙台市の「優良広告賞」に輝いたということで(
 「第24回仙台広告賞」の新聞部門、銅賞を受賞。
「べーからの手紙」No.22 を参照)、誰もが過ちを犯したわけではありませんでした。
さらに続いて、東京地裁の担当者も仙台の「コーヒー豆屋ベートーベン」に足を運び、
商品をいくつか購入していきました。(
 事実は、担当判事が、仙台勤務の経験者達に
「ベートーベン」について尋ねたところ、「知っている」「買ったことがある」という返答だった、です。)
幾度かの法廷弁論の後、ついに1994年10月に、ユニヴァーサル・ピクチャーズとヒロシは
和解するにいたり、それにより日本人の商店主は「ベートーベン」という名前を、仙台の
自分のコーヒー店にも、FCI(国際蓄犬連盟)に正式登録された犬舎名
(Bernard Beethoven)にも使えることが認められました。
これは、「ベートーベン」に絡む権利のうち、ユニヴァーサルが認めた、目下唯一の
世界的違反行為となりました。
もちろん、我らがヒロシは、映画そのものには何一つ対抗措置は執らず、
映画の中で働いたセント・バーナード達のすばらしい演技力(本報8号を参照のこと)を
高く評価したのでした。

ヒロシはこれまで、3頭のセント・バーナードを飼ってきました。
ベートーベン1号(1978−1982) ( 正しくは1979−1983)
 メスで、日本チャンピオン、トレーニング・チャンピオンを受賞。
ベートーベン2号(1983−1998)  正しくは1984−1998)
 オスで、ベートーベン1号が獲得したタイトルを引き続き獲得、
 さらにFCI東京インターナショナルショーで BOB (ベスト・オブ・ブリード)のタイトルを受賞。
ヨハン(1998− ) ( 正しくは1999−)
 現在生存中のオス、すでに大きくなってからヒロシが飼い始めたもの。
 (・・・それで、ベートーベン3号ではないのです。)

イシハマ ヒロシ さんと連絡を取るには、以下のアドレスに英語でメールをお書き下さい。
*メールアドレス省略

写真解説
ヨハン、イシハマ家の現在のセント・バーナード、首にはAISBの樽が・・・。
「メイド・イン・イタリー」は、いつも日本人が大好きなものです!


       日本人が大好き!なイタリア製の樽を着けた、日本のセント・バーナード達

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