ベーからの手紙      

No.171  2022年3月2日

 元気ですか?

 突然の話を聞いて、ほんとに驚いています。
 僕が生まれて、いろいろと勉強をして、たくさんの仲間と
 過ごした訓練所が、3月でおしまいになるんですって。
 1代目のベートーベンも、ヨハンも、バナ子も、そして
 カイザーも通った学校です。


 訓練所の門を入ると校庭、その奥に、僕たちが過ごした2階建ての建物が
 あります。 僕は、2階にある広い産室で生まれました。
 歩けるようになったら部屋から出してもらい、一緒に生まれた兄弟たちと、
 ずらりと並んでいる犬舎の周りを走り回って遊びました。
 
 ある日、男の人と女の人が2階にやって来て、僕たち兄弟を代わる代わる
 抱いて、そしてこう言ったんです。 「この子にします。」
 パパとママとの出会い、僕が”ベートーベン”になった始まりの日でした。
 後から聞いた話だけど、2人が僕を選んだ理由は「1番かわいかったから」
 なんですって。
 これ、カイザーを選んだ時と同じですよね。

 小さい時からお店の中で過ごすようになり、日光不足で”くる病”という病気に
 なってしまった僕は、治療のためにまたしばらく訓練所で過ごしました。
 毎日、毎日、校庭でお日様を浴びていました。
 今は、昔と比べるとドッグフードがよくなって栄養がきちんと入っているから、
 病気にはならないんだそうです。

 やがてあちこちのドッグショーに出るようになると、シャンプーやショーの
 練習のために訓練所へ。
 あゆちゃんとひろちゃんが生まれる時も、しばらくの間、訓練所。
 僕は、結構長い期間をあの訓練所で過ごしたんです。

 僕がいた頃は、本当にたくさんの大きな犬が訓練所に来ていました。
 シェパード、ドーベンルマン、ボクサー、エアデール・テリアに秋田犬、
 そして僕たちセント・バーナード。
 用を足すときはみんなが一斉に校庭に出るから、気に入らない相手と
 にらみ合ったり、力を誇示して小競り合いにあることもありました。
 そんな時は、何人もいる訓練士さん達に厳しく叱られたっけ。

 今は、訓練のやり方も僕らの時とは全然違うんですってね。
 「ほめて育てる」そうなんです。
 カイザーの担当の訓練士さんが言ってました。
 「こんなにほめるかっていうくらい、ほめまくりますよ。
 できる、できる、ほらできた、って自信を持たせるんです。」
 もしかしたらカイザーは、訓練所で怒られたことなんてないんじゃ
 ないかなぁ。

 1代目のベートーベンは、重い病気の最期の時を訓練所で静かに
 送りました。
 3代目のヨハンは、以前の家族が手放して訓練所に引き取られ、
 初めて訓練を受けたようです。
 4代目のバナ子は、ほんの子犬の時に病気になり、2才までずっと
 訓練所にいました。
 カイザーは、これからもずっとお世話になり続けるんだと思っていた
 けれど、今年の3月いっぱいでおしまいにすることが決まった
 そうです。

 とても残念だけど、仕方がありません。
 校長先生、訓練士のみなさん、1代目のベートーベンからカイザーまで、
 本当に長い間お世話になりました。
 ありがとうございました!

                        今日はここまで、またね。
                             
Beethoven


「よ〜しよし、できたぞ、カイザー」

一緒に勉強する仲間たちと訓練士さん

面会の日、家族と歩く練習

練習が終わったら、ワシャワシャ!

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