白バラの心 No.10    ガン日記


本人が表紙に「ガン日記」と記している最後の日記、ノートは2冊目に入ります。
” 白バラの心 No.8 ”の続きです。
2冊目の見開きのページには、マンションのベランダで自分にカメラを向けて撮った、
髪が長く伸びた本人の写真が2枚、背後にプランターの赤紫色のペチュニアが写っています。
写真と一緒に、治療のために抜け落ちる前の、くるりとした巻き毛の束が3つ、
ていねいに袋にしまってホチキスで止めてあります。
   (「私の巻き毛  わずかに白髪もまじっている」と鉛筆で走り書き)

 
        仙台の実家の庭で                     父と娘
    
  2004・8・28

朝日カルチャー(注:児童文学翻訳講座)の3回目を、スカーフをかぶって終えた。
頭頂部が、すでにうすくなっていた。

夜、バスルームで髪を切った。 クルクルした、かわいい巻き毛だった。
頭頂部は、ほとんど全部抜けて、白い地肌が見えていた。
2年前は、1回目の投与ではまだ抜けなかった。
2年前の薬より、はるかに強い薬であることを実感している。

  9・1  タキソール 2回目

  9・2  
メダカが4匹、生まれていた。 私もがんばろう!
夜、残り少なくなった髪をていねいに洗った。 リンスもした。 どのみち、まもなく・・。

  9・5
午後、Kさん、Sさん、来る。 GudrunからTel。 51才になった。

  9・9
夜、寝る前に、どういうわけか水上 勉のことを、ふと思った。

  9・10  水上 勉 没

  9・13
Kastanien(クリ)のはちみつを買う。 ほのかにKastanienの花の匂いがした。
ドイツがなつかしかった。

夜、YさんからTel。ドイツでSonjaの娘さんに会い、Sonjaからの「心配している」と伝言を聞く。

  9・22
エコーの結果   8・2→15×20×10   9・13→23×18×18

  11・20(土)
2〜3W(週)前から、頭にうぶ毛が生えてきた。毛根が復活してきたらしく、黒い点々が見える。

都立KH(病院)のDr.Yの話。 「Dr.Kから“うちで手術できない患者がいるのでよろしく”とTelがあった。」

  2004・12・17
Dr.F 「新病巣ができたということは、抗ガン剤が効いていないということ。
     これから、外科のK先生のことろに行って下さい。」
→Dr.K  「ぜいたくは言えませんからね。ここで手術の順番待ちをしている間に起こることを考えると
       恐ろしい。空いているKHを紹介します。」

(注:病院への不信感が募った姉は、この後、自ら聖路加病院へ転院します。
   改めて様々な検査、入院、そして手術。  ノートにはかなりの空白。
   日記の空白の代わりに、スケジュール帳に日々のできごとが書き留めてあります。
   12月7日、文京区から、最後の住まいの千葉市のマンションへ引っ越し。 年末・年始はドイツへ。)

  
  2005.3.16
夜にT氏からTel。 議員になったことを後悔している、と言うと、
「議員とガンに因果関係はない。自分で決めたことだ。自分でやってきたことを何も否定することはない。」

このあと2日間、ただ泣いていた。 ただ、つらかった。  

  3・18      精神的につらい。
 
  3・20ごろ   頭の毛が数本、生え始める。

  3・24
やっと、また少し明るい気持ちになれた。
ムスカリがたくさん咲いて、ベランダにスズメが来てチュンチュンないていた。 元気が出てきた。

  3・27ごろ  まつげの毛根がいくつか復活 (まつげ1本は最後まで残った!)

  5・3    まつげ・まゆげ  まだ数ミリだが、だいたい生えそろう。

 (手帳より 5・23  生まれたてのメダカの子が1匹、スイスイ泳いでいた。
              午後には、もう1匹。 明るい気持ちになった。)

  2005・5・28
NHK 「うつ病」  無気力、ゆううつが2W(週)以上続く。悲観的、絶望的になる。
           不眠からいくらでも眠い。興味がわかない。何も手につかない。
           外に出る気がしない。吐き気。集中力がなくなる。根気がない。自殺を考える。


(次のページに、「乳房切除手術を受けられる方へ」という病院のプリント
  「14:45 着がえ 15:00 手術 」と本人のメモ
  入院の際に手首に巻くネームカードもはさんであります。)

  
  2005・6・13(月)
10:30  再入院  415号  部屋は前回より少し小さい。 (423は長いす)
       長いすも足台もなく、ふつうの椅子のみ。これが3万円のスタンダードの部屋とのこと。
12:00  ランチ
14:00  シャワーをあびる。  注射  KさんにTel
16:00  「バベットの晩餐会」のビデオを見る。
       Dr.T、Dr.H、麻酔科2人、回診
21:30  睡眠剤をもらう
22:00  寝る

  6・14(火)
5:30   検尿
6:30   検温
8:00   点滴開始
14:00  Tさん、来る
15:00  手術(麻酔)開始   Dr.N  Dr.H Dr.T Dr.A
18:00  手術終了
       Dr.H 「ごめんね。残せなかった。」  
       私 「しょうがないね。 最初からここに来てたらよかったね。 今、何時?」
       Dr.H 「6時」   私 「お昼、食べた?」
       Dr.H 「当然、食べてないよ。」   私 「だめだよ、それじゃ。体こわすよ。」
19:00  部屋に戻る。 「おなかすいた」と言う。
21:00  夜、ナースが顔をふいてくれる。
       「傷、見ましたか?」 「悲しくなるから、見ない。」
       歯は自分でみがく。
22:00  ニュースステーションを30分ほど見る。
       痛み止めをもらう。
23:30  再び、寝る。
                                       (つづく