「 若林ひとみの文京区議会便り No.9 1997年夏号 」
ー 山小屋にでもこもって、毎日本を読んで暮らしたいと思います。 −
1997年8月6日発行 全4ページから抜粋・要約
(議会便りに続いて、議員時代のホームページからの文章を掲載)
文教委員会(97・6・13)から・・・学校統合問題について
来年4月に、真砂小と元町小、二中と四中を統合するための条例は、賛成28、反対10で可決された。
私は統合に反対ではないが、来年4月の統合はあまりに性急と思い、「平成10年4月より施行は反対」とした。
これまで、統合の対象地域の説明会に7回出席し、保護者・地元や同窓生の方々が統合問題をどうとらえているか
耳を傾け、個別にもいろいろと意見を伺ってきた。 その中に、「統合に絶対反対」という方は1人もいない。
「去年、話が持ち上がり、来年4月に統合では急すぎる」「せめてあと1年、時間がほしい」と慎重なだけなのである。
歴史も校風も違う2つの学校が一緒になり、同窓生にとっては出身校がなくなるのだから、
時間をかけて検討したいのは当然だと思う。
にもかかわらず区は、「区の進め方は性急である」という意見には「性急ではない」、
「新しい学校のオープンスペースは研究の必要があるが、間に合うのか」の問いには「間に合わせるしかない」と、
”来年4月に統合”の大前提を崩そうとしなかった。 説明会というよりは”説得会”というのが私の印象。
私は、「この1年、区が各地で説明会を開いて、やっと区民に統合問題が浸透してきたと思う。統合を1年先に
のばしてはいけない理由は何か。」と委員会で質問したが、区の答えは「統合による子どもの不安をなくすため、
時間はなるべく短いほうがいい。」であった。
心の準備や十分な交流期間がないままの統合は不安である、という区民の声もある。
統合問題に関してのアンケート調査や、区政モニター等からの区への意見を情報公開請求して調べてきた。
これをもとに委員会で質問すると、与党議員から「なぜ若林だけがそういう資料を持っているんだ?」の声。
これはほっとくとして、調べてわかったのは、”統合賛成”の中にも条件付き賛成がかなりあったこと。
しかし区は”来年4月統合”を敢行するために、「早く統合を進めてほしい、という区民の意見がある」としてきた。
シビックセンター建設の時と同じやり方だと思った。
最初の頃の区の説明会にはいろいろな方が出席し、学校教育に関する意見や疑問を述べていた。
しかし教育委員会の反応はゼロ、発言者に対して応えることもなく説明会は進んでいく。
教育問題の根幹にふれるような様々な意見が出されても、区は、「統合問題と関係ない」
「文京区だけではどうすることもできない」で片づける。
説明会に出席した多くの方から、「区の説明は、文京の教育をどうするかという視点に欠け、
数合わせの話に終始している。」と不満が出ていた。
私は、「いじめ問題等が起きている中で、出席者からいろいろな意見や問題提起がなされた。
統合問題に関係ないからと意見を切り捨てるのではなく、もう少し区民の意見をくみあげる努力をしてほしい」と
委員会で要望したが無駄であった。
やがて説明会は会を重ねるごとに出席者が固定化し、どの会場でも、同一人物が「なるべく早く計画通り
進めてほしい」と同じ意見を述べるようになった。
区は「おおかたの賛同を得られた」としているが、私には、区には何を言ってもまともに取り上げてもらえないと、
あきらめて物を言わなくなった区民がかなりいるように思える。
せっかく区民の中に教育問題に関する関心が高まったのだから、区の教育のあり方を考える場ができないものか
と思っていたところ、区民有志が「学校統合問題と子どもの教育を考える文京区民の会」を作って下さった。
統合問題を全区的な問題としてとらえ、広く文京の教育のあり方を考えていこう、という会である。
関心のある方は、お問い合わせを。
昨年から何回か私は、「当事者である子どもが統合問題をどう思っているのか、ぜひ1度、子どもの意見を
直接聞いてほしい。」と委員会で要望してきた。
私が初めてこの意見を述べた時は、他の議員から嘲笑とヤジ。
1月24日の委員会で”子どもの権利条約 第12条”の”子どもの意見表明権”を引き合いに出し、再び上記の
要望をすると、U議員が「子どもに、教育理論や適正規模、適正配置、こういう問題がわかるか。
子どもが堂々と自分の意見を述べることができたら保護者はいらない。家庭教育の必要性はない。」と発言。
”子どもの意見表明権”については、条約制定当時、日本からの問い合わせが相次ぎ(日本の大人にとって
子どもにこのような権利を認めるのは意外であった)、国連の”子どもの権利委員会”は驚いたそうである。
(注: 「直接子どもの意見を聞いてほしい」という若林ひとみの要望は、長年ドイツとの関わりが深い本人の
生き方によるもの、また、児童文学の翻訳の仕事において、子どもの意見や気持ちを尊重するという
立場に立っているからだと思います。 私記 )
公会堂特別委員会(97・6・6)より
新しくできる公会堂の名称、及び愛称が委員会で審議された。(愛称は未定)
名称は、4年前に公募雑誌にも募集要項を出して一般公募を行ない、その結果、2800点の応募作の中から
大分県の方の「響きの森公会堂」が入選(賞金10万円)、そして愛知県と神奈川県の方、文京区民からの
佳作4点(賞金2万円)が決まった。
「響きの森公会堂」というのは軽井沢あたりのホールならともかく、文京区の公会堂としてはピンとこないと
思うが、4年前の委員会でも、今回の委員会でも、この名称には他の議員も納得していないという。
しかし、審査会の決定を委員会でくつがえすことはできないそうである。
審査委員7人のうち、職員と区民代表の5人は無報酬だが、学識経験者とコピーライターの2人には
各々10万円の謝礼が出た。
文京区の公会堂なら、区民に名前をつけてほしかったと思う。
議会運営委員会(97・6・10)より
今秋に来日予定の(姉妹都市)カイザースラウテルン市議の受け入れ経費517万円についての、各議員の発言。
S議員 「向こうをお招きするということだったのに公式訪問団となった。こういうことでいいのかと思う。
奈良・京都はぜひとも見ていただいて、日本文化の精髄に触れてほしい。」
(確かにそうだが、財政難の折に区民の税金で行ってもらうこともない。)
(別の)S議員 「昨年はこちらが行ったので、今年は向こうを呼ぶということで予算を組んだ。」
(昨年、文京区議が訪問した時の経費は全額こちらの負担。いろいろとお世話になったのは事実だろうが、
区議団は日本酒を持参して、向こうでお礼の宴を開いている。500万円もの予算を組んで招くのは
いくらなんでもやり過ぎ。)
K議員 「(姉妹都市交流が)10年ですたれるのはまずい。ただ行くと観光だと言われるから、
勉強会ということになった。」
(もともと、姉妹都市交流にその程度の必然性しかなかったということ。)
文京区が行なっている国際事業交流の中に、カイザースラウテルン市との児童・生徒の絵画交換がある。
実際には交換ではなく、文京区から一方的に送り、相手からは来ない。
カイザースラウテルン市の倉庫は、文京区から送られてきた絵でいっぱいだとか。
姉妹都市交流に対する両市の想いの差を象徴する出来事だと思う。
勉強会のお知らせ
「議員の海外視察を考える」
都議会は、私が起こした裁判により今年度から海外視察を自粛。約6000万円の税金(視察経費)の
節約となった。他にも今、県議会の海外視察等で訴訟を起こしている人達がいる。いくつかの事例を見ながら、
議員の海外視察のあり方を考える。 (8月30日 文京区民センターにて 参加費は500円)
文京区議会の海外視察報告書を読みたいとお知らせ下さったみなさん、調べていると次から次とおかしなことが
見つかり、あっという間に時間が過ぎている。時間のある方は、どうぞ上記の勉強会にお出かけを。
平成8年度、各会派の政務調査費の報告書
(6つの会派の報告書のコピーを掲載) 前年度よりはましというべきか?
でも、1円の単位まで記入して収支がぴったり合い、残金ゼロというのはほとんど神業である。
雑感
今年4月にドイツに行った際、「なぜ日本では議会議長が毎年変わるのか?」と聞かれた。
「たぶん、高額な議長手当てのせい。文京区の場合、議長の報酬は一般議員より年間で約500万円多い。
400万円の議長交際費もつく。」と言うと驚いていた。
ドイツにも議長手当てはあるが月額1万数千円程度。日本のような多額の議長交際費はない。
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若林ひとみの「議員だって本を読む」 第2回 (2000年10月)
日本の有権者の中に、自分の住む町の議会を傍聴したことのある人は何人いるだろうか?
実は、かく言う私もつい6年前までは文京区議会を傍聴したことがなかった。
6年前、豪華区庁舎の見直しを求めて住民運動を行なっている時、初めて区議会を傍聴し、
私たちの暮らしを変えるためには、まず足下の議会から変えていかなくてはならないことを痛感した。
そして、「批判だけしていてはいけない。自分で体を動かして、変える努力しなくては。」と、
区議選への立候補を決めたのだった。
議員になって6年、いろんなことを経験したが、こういう話はいつか別の機会に聞いていただくとして、
ここでは本の話をしよう。
『知って呆れるチホウ自治ニュース』(樺嶋秀吉著、風媒社)には、著者が日々チェックする全国紙、
地方紙に出ている「地方議員(議会)に関わる“呆れ返るような珍事”」の選りすぐり(?)が紹介されている。
議員としての調査・研究活動に使うべき公金を愛人の生活費に充てていた北海道議会議員の話が最高傑作だと
個人的には思っているが、まあ、みなさん、読んでみてください。そして、「何だ、これは?!」と思ったら、
ご自分の町の議会のことを、議長交際費でも、国内外の視察の内容でも、議事録の作り方でも、
何でもいいので調べてみてください。
著者は、本書を読んで「これは、なんとかしなければ」と思ってくれる人が1人でも多く現れることを願っているとの
ことだが、私は、読者の中から次の選挙に立候補してくれる人が1人でも出てくれることを願っている。
地方議会の実情をもっと知りたいと思う人にお薦めするのが、『地方公務員のための議会対策実戦マニュアル』
(酒井純一著、ぎょうせい)。都下の某市で管理職を長年務めた著者が、後輩職員のために議会での
答弁の仕方等を記したハウ・ツー本だが、地方議員の一面が実によく描かれている。
類似の本に『議会答弁心得帖』(篠崎俊夫著、ぎょうせい)があるが、なんとこの本は1984年の初版以来、
98年までに22刷を重ねている。このような本が書かれる必要も読まれる必要もなくなった時が、
議会の民主化と活性化が達成された時なのかもしれない。
『議論に絶対負けない法』(ゲーリー・スペンス著、三笠書房)は、数年前、文京区議会内で“袋だたき状態”
だった私が「負けてたまるか!」と思っていたときに読んだ本。
「議論に勝つためには準備(事前の調査)を周到にすること。しかも、楽しみながら。」が、300ページを越す本の
エッセンスだろうと思うが、これを読んで私はほっとした。
なにせ、調べものは私の趣味だから。
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