「 若林ひとみの文京区議会便り No.8 1997年春号 」
− 区議生活も折り返し点を過ぎました。今後どうすべきか考えています。 −
1997年5月9日発行 全4ページから抜粋・要約
(議会便りに続いて、議員時代のホームページからの文章を掲載)
なぜカイザースラウテルン市と姉妹都市となったか?
2月20日、4回目の一般質問を行なった。今回のポイントは”姉妹都市”である。
<質問1>
カイザースラウテルン市(ドイツ)とは1980年以来交流してきたが、同市を選んだ理由は
議会にも記録がなくて不明である。同市を姉妹都市にふさわしいと判断した理由は何か。
<区長答弁>
議会の提案を受けた。
<解説>
区議会は、1980年から4年連続で姉妹都市調査団をカイザースラウテルン市に派遣(報告書はなし)、
83年にまず友好都市提携を、88年に姉妹都市協定を結んだが、交流の経緯の記録が議会にも区にもなく
わからない。 ドイツは私にとって74年の留学以来なじみの深い国だが、以前から、文京区の姉妹都市の
相手がなぜカイザースラウテルン市なのか不思議に思っていた。
調べてみてわかったことは、
@80年に、文京区も海外の都市と交流しようという話が議会であり、姉妹都市調査委員会が作られた。
A委員長のO議員がスポーツ交流でドイツに行ったことがあり、ドイツ大使館に相談に行った。
B日本語のできるF書記官が、区の希望であるマインツ・ハイデルベルク・フライブルクの他に、
自分の故郷であるカイザースラウテルンを推薦した。
Cその後委員会で、イギリスも加えようということになり、観光客に人気の町を加えて交渉を始めた。
Dところがカイザースラウテルン以外の町は交流に気乗りが薄く、熱心だったカイザースラウテルン市
(上記のF氏の働きかけがあったと思う)に決めた。
<質問2>
昨夏、区議10名が約900万円をかけてカイザースラウテルン市・他を訪れた。
今秋、カイザースラウテルンから数名の議員が文京区を訪れるが、(先方の)負担は航空運賃のみで、
その他の費用は、通訳代から奈良・京都への観光旅行代まで文京区が全額負担する。
双方の議会の対等な交流なら経費負担も平等であるべきだが、517万円の経費を認めたのはなぜか。
<区長答弁>
議会から予算要求があったからである。
<解説>
昨年7月、10名の区議がカイザースラウテルン・ボン・ブリュッセル・ロンドンを10日間の日程で訪問、
同行職員2名の分も含めると費用は約1050万円である。
なぜ区議団が訪欧したかというと、
@一昨年は選挙で、海外視察を行なわなかった。
AS議員が改選後、新議長になった挨拶状をカイザースラウテルンに送ったところ、
「あなたと同僚にお会いしたい」と返事が届いたので行かなければならない、というのである。
B昨年の予算委員会で私が、「この手紙は正式な招待状ではないので、これを受け取ったからといって
行かなければならない、ということではない。」と区議団訪欧経費に反対すると、与党議員からの総攻撃。
委員会終了後に副委員長が「あのような手紙をもらって、ほっておくわけにはいかない。」と私に説明。
C事務局長も、「昨年、職員がカイザースラウテルンを訪問した際にも口頭で訪問要請があった。」
D結局、カイザースラウテルンでゴミ・リサイクル問題でシンポジウムを開くこととして、区議団は訪欧した。
4月初め、私はカイザースラウテルンを訪れた。(注:私費) 文京区が500万円もの予算を組んで
カイザースラウテルン市の議員を受け入れることを、カイザースラウテルン側はどう思っているのか、
また、区の与党議員が言う「今後は双方の議員で毎年シンポジウムを開いて交流を深めていく」ことに、
相手方がどれほど乗り気なのかを確かめたかった。
私が「500万円」と言うと、担当者は何度も「あなたの言い間違い。ゼロがひとつ多い。」と、なかなか
信じてくれなかった。
カイザースラウテルン市の今年の国際交流予算は約380万円。これで、文京区を含め5つの姉妹都市との
交流事業、その他にさらに3つのプロジェクトをまかなうのである。
東西ドイツ統一後に財政事情が悪化して失業率は15%、国際交流予算は前年度より10%削減されたそうである。
文京区議団の訪問に関するカイザースラウテルン側の説明は、
@S議長に宛てた手紙も、(訪れた)職員に口頭で「おいで下さい」と言ったのも社交辞令である。
普通、そういう風に書いたり、言ったりする。
A今秋、日本に行くのは姉妹都市協定の範囲内でのこと。
文京区から「ゴミ問題をいろいろと教えてほしい」と要望があったので、専門職員と議員5名を派遣する。
ゴミ問題は文京区からの要請なので、勉強会の通訳は文京区が負担すべきと思うが、観光旅行代は
当方で支払う。 しかし、なぜ500万円もかかるのか不思議である。
B昨夏こちらで行なったシンポジウムは、シンポジウムというよりは、文京区議がカイザースラウテルン市の
職員の説明を聞く勉強会、という内容であった。
区議会事務局長の説明では、奈良・京都への2泊3日の旅行代も文京区が持つので費用がかかる、
ということだが、双方の言い分にはへだたりがある。 500万円は、いったい何に使われるのだろう?
また、「双方の議員でシンポジウムを開く」というのも、だいぶ趣が異なるようである。
私が質問をしている間、議場はヤジで騒然。今までで1番ヤジがひどく、傍聴に来ていた人は
ほとんど何も聞こえなかったそうである。
予算特別委員会から
今回、私は予算案の審議に加わることはできず、傍聴しかできなかった。
来日するカイザースラウテルン市訪問団の受け入れ経費517万円に反対したのは共産党議員だけだった。
(実際の議会便りでは、予算委員の名簿と、平成4〜8年度の海外視察参加議員名を掲載)
1度行ってしまうと批判はできなくなることを如実に語るこの名簿、都議会の海外視察もそうだが、
”市民派”を名乗る議員も、庶民の味方だったはずの党の議員も、共産党以外の議員は皆、
”視察”という名の豪華海外旅行に参加していることに1番がっかりした。
議長交際費の実態を紹介します
平成7年度分の議長交際費400万円は、私が不服申し立てを3回行ない、やっと開示率37%にこぎつけた。
開示されたそのほとんど(83件、計120万円)は、「議会運営に要する経費」という飲食代である。
幹事長会や、他都市の議会からの訪問団などの飲食代は、別に食糧費から出ている。
(領収証のコピーを掲載→約3万円の酒代・約6万円の生そば代・約6万円の中華料理代・・レーザーディスクと
花束は店からのサービス・・宛名も日付けも但し書きもない6万5千円と書かれた領収証もある。)
議会オモシロ発言集
これまでに聞いたケッサク発言をご紹介する。
M議員→(議会運営委員会で「本会議場での議員のヤジがひどく、傍聴者に質問議員の声が聞こえない」との
指摘を受け)「議員席と傍聴者席の間にガラスの仕切りを作り、質問している議員の声だけマイクで
流しゃいいんだ。」
工事費は、誰が払うの? ちなみに、年間17日しか使わない議場の内装費は1億円、もったいない。
I議員→(厚生委員会で保育料値上げ問題に関して)「子供は本来親が育てるべき。今の出生率は1.1人。
子どもが少ないほど親は育てやすい。自分で育てるべき子どもを人様に面倒をみてもらい、親は
感謝すべきだ。社会が子どもの面倒をみなきゃいけないという発想がおかしい。
高いの安いの、何言ってんだ。預かってもらえるだけで感謝すべき。」
M議員→「保育園児1人当たりの経費は266万円。200万円あげるって言ってごらん。
親はみんな子どもを預けないで金もらいに来るよ。」
この発言、元厚生大臣のM党代表に聞かせたかった。
雑感・雑感
★都議会は「財政状況が好転するまで海外視察は中止する」ことを決定した。やった!!
でも中止になっても、海外視察の航空運賃差額訴訟はこれからである。傍聴にお出かけを。
★ミス文京コンテストは今年度から廃止になった。一昨年の私の質問が少しは功を奏したのか?
ところが、K議員がこれに異議を唱えた。K議員は2年後の区長選に出馬予定だが、
区長になってミス文京を復活させたりはしない?
★費用弁償(議会が開かれる日の手当てと交通費・食事代)という名の日当、私の昨年度分は18万円だった。
これをまず所得として税務署に申告し、20%の税金を支払い、従軍慰安婦等を支援する区外の団体に寄付した。
★2年前に議員になった時、出版社の営業マンが「みなさんお買いになる」と、ある本を私に熱心にすすめた。
模範例が載っている「議員のあいさつ集」という本である。私が「あいさつは自分で考えるから結構です」と
断わると驚いていた。「市長のあいさつ集」という本もあるとか。
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若林ひとみを支援し、様々な行動を共にして下さった方々が、こんな話を聞かせて下さいました。
「議員の海外視察旅行費返還訴訟の法廷で、必要経費というドイツでの領収証を検証したひとみさんが、
こう言ったの。 『この金額の数字は、ドイツ人が書いたものではない。日本人が書いたものだ。
なぜなら、ドイツ人はこのような数字の書き方はしない。』って、ドイツの学校での数字の書き方の教え方を
説明したの。そして、それが裁判で認められたのよ。日本人が後から数字を書きこんだ偽造の領収証だって。
ひとみさん、かっこよかったわよぉ。傍聴している私達は、まるで推理ドラマを見ているみたいでドキドキしたわ。」
「振り返ってみると、彼女と過ごした日々は本当に楽しかった。
シビックセンターで調査をしたり、いろんな経験ができました。」
そして、訴訟でお世話になった弁護士さんのお1人がこうおっしゃいました。
「ひとみさんの功績の1つは、それまで裁判になんの関わりもなかった素人の女性達に、自らの意思で積極的に
政治や裁判に参加する行動を起こさせたこと。 彼女達は生き生きしてたと思うよ。
ひとみさんとの関わりがなければ、そんな経験はできなかったわけだから。」 (私記)
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「地方行革はまず議会から」 (地方自治職員研究 1998.7)
■ 理事者ばかりを追求していた住民運動の反省から議員に ■
「皆さんは、私たちの事ばかりお責めになるけれど、どうしてもっと議会の責任を追及なさらないのですか。
私達は議会が承認したことを実行に移しているだけです。」
区役所(旧庁舎)の階段の踊り場ですれ違ったある職員が、私に言った。94年の秋頃だった。
当時私は、区の豪華庁舎の見直しを求める住民運動を行っていた。学生運動すらやったことがなく、政治とはまったく
無縁の生活を送ってきた私だったが、26階建ての新庁舎に、区民一人当たり20数万円の税金が投入されると知り、
黙ってはいられず、住民運動の輪に加わった。
住民運動の過程で、初めて議会も傍聴した。議員の飛ばすヤジ・怒号にも驚いたが、もっと驚いたのは、
反対意見に論理的に反論するのではなく、誹謗中傷的発言で反対意見そのものを頭から封じ込めようとする与党議員の
態度だった。議会に失望した私達は、区長以下の幹部職員に何回か面談を求めては、その責任を追及していた。
しかし、考えてみればその職員の言う通りだった。議会の承認なしに、区長が独断で建設を強行することはできない。
住民の代表機関である議会が反対してさえいれば、都庁はじめ日本各地のハコモノは、作られることはなかったのだ。
私はこの時、追求すべきは“議会の責任”であることを悟った。そして、議員の待遇を調べ始めた。
それまで、議員が一体いくら報酬をもらっているのかも知らずにいたが、予算書を見て、約1000万円という額に驚いた。
次に、海外視察の報告書を読み、その内容のなさに驚いた。
議長交際費の使途は不明朗で、杜撰な会計処理が許されてきたことにまだ驚いた。
立候補を決意したのは、3年前の統一地方選挙告示の10日前。せっかくの機会にもかかわらず、選挙に候補者は出さない、
という住民運動グループに業を煮やし、まったく1人で、支援組織もお金もないまま、事務所も開かず、選挙カーも使わず、
街頭演説もせず、選挙公報と選挙はがきとポスターのみで、日中は自分の仕事をしながらの選挙戦だった。
公約は、“議員の厚遇や特権の見直し”。 「女性候補の公約はたいてい福祉や教育なのに、珍しいですね」と
取材にきた新聞記者に言われた。しかし私は住民運動を通し、税金を有効に使って私達の生活の質を高めるためには、
まず、議会から変えていかなくてはならない、ということを痛感していた。
観光旅行紛いの海外視察等で議員自らが公金の無駄遣いをしている限り、執行部のチェックなどできるわけがない。
■ 議員の厚遇にもかかわらず政治・行政が進展しないのは ■
さて、ポスターは貼るそばからはがされ、破かれ、無言電話がかかり、おかしなビラもまかれたが、なんとか当選を
果たすことができた。驚いたのは、議員になって初めて知った“厚遇”があったことだ。
領収書のいらない政務調査研究費、報酬の他に出る、実費をはるかに上回る費用弁償、議員待遇者会等々。議員に
これだけお金をかけながら、欧米諸国に比較し劣悪な生活環境を強いられている日本国民は不幸だと、つくづく思った。
厚遇や特権を見直し、公金使途に襟を正すことは、議員がその気になればすぐにできることである。
早速予算委員会などで、海外視察の見直しや政務調査費の会計処理の改善を提案したが、古参議員に
「都議会でもこうやっているのだから、これでいいのだ」とやりかえされた。それならまず、都議会から変えねばなるまいと、
私は都議会の海外視察、政務調査研究費、議会会計文書の情報公開をめぐり、次々と訴訟を起こした。
その結果、都議会は昨年の海外視察を中止し、政務調査研究費についても、使途基準を定めるなど若干の改善が見られた。
また、情報公開の実施も検討がなされている。
都議会の動きに合わせて、文京区議会でも政務調査研究費の使途基準明確化の作業を進めている。
また、海外視察も行なわなくなり、議長交際費の使途も開示率が40%までになった。大きな回り道をしながらも、
選挙公約を少しは達成することができてほっとしている。 ちなみに、弁護士費用、情報公開請求文書のコピー代、
資料分析のための人件費等、都議会相手の裁判に要した経費は百数十万円。
私は政務調査研究費は返上しているので、総てを私費でまかなっている(決して楽ではない)ことを申し添えさせていただく。
■ 議会を真の言論の府に ■
しかし、議会で最も改善されるべきは、このような議会費の問題ではなく、議会を真に“言論の府”とすることであろう。
何度か傍聴したドイツ・オーストラリアの国会や地方議会では、議員間の議論が活発に行われており、
異邦人の私でさえ聞いていて面白かった。 一方日本では、議員間討議は低調で、また、質問者も答弁者も原稿を読み合う
形骸化した本会議での代表・一般質問は、ひたすら空しい。
日本で議員同士が活発に議論を交わすようになるまでには、相当の時間を要するだろうが、せめて本会議での自分の質問は
従来のスタイルから脱却させたいと、私は毎回、原稿を作らずにカードに要点を記し、必要な資料は演壇に持ち込み、
時に資料を参照しつつ質問を行っている。
文京区議会では、代表・一般質問の勧善原稿を事前に提出するのが長年の慣行となっていた。
質問要旨しか提出しない私に対し、当初、議長からも職員からも圧力がかかったが、明文規定のない単なる慣行
(悪しき慣行だと私は思っているのだが)に従わねばならない理由が私にはわからなかった。
最近は、職員も私のやり方に慣れてくれた。あとは区長や教育長が、職員の書いた答弁書の棒読みをやめ、
自分の言葉で肉づけをして答えてくれることを願うばかりである。
■ 自治体職員の本音を聞くと ■
「議員はバカだもの」 「議員だってあの程度ですからね」 「議員なんて怖くない」・・・・・・
これはいずれも、私が議員になって後に会った関東地方の県、市、特別区の職員が私に語った言葉である。
これが職員の本音であろう。難しい公務員試験をパスした職員の皆さんから見れば、私達議員はもどかしい、
あるいはコツさえ飲み込めば御しやすい存在かもしれない。しかし、だからといって今までの慣行に沿っての、
議員との馴れ合いの行政や議会運営を善しとするのではなく、つたないながらも議会や行政の改革に取り組んでいる議員に、
エールを送っていただければと思う。
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