「 若林ひとみの文京区議会便り No.7  1997年冬号  

 毎日、体がいくつあっても足りないくらい忙しい・・・今年も元気に仕事をします! 

         1997年1月16日発行  全4ページから抜粋・要約
       
( 区議会便りの後に、議員時代のホームページからの文章を掲載 



                      決算委員会から

私は、平成7年度決算を認定しなかった。主な反対理由は、(1)シビックセンター建設関連費
(2)不明朗な議会費 (3)区長への前期分退職金である。
さて、私が春の予算委員会に引き続き議会の政務調査費の追及をしていると,
信じられないことが起こった。
これまで私が何か発言するたびに、ことごとく反対してきたS議員が、「政調費を何に使ってよいか
ガイドラインがないから不正使用しているようにとられるのだ。よって、ガイドラインを設けるべきだ。」
耳を疑いつつ、「S議員と私の意見が一致するのは、これが最初で最後かもしれないので、
ガイドラインはぜひ設けてほしい。」と私が言うと、職員も議員も大笑い。
S議員には「よけいなことは言わなくていい!」と怒鳴られたが。
S議員は7月の都議選に○○党公認で出馬する。△△党から○○党に衣を変えただけで、
議員の考え方がこのように変わるものか。
与党の古参議員が総がかりで私をつぶそうとした昨春の予算委員会と今回との雲泥の差に、
われながら驚いている。

委員会において、私が「世論調査は公正に行なわれたとは言えない」と述べたところ、
M議員から、「われわれ常識のある人間からみれば公正、常識のない人間からみると公正でない」と
大声で言われた。 世間の常識が通用する議会に早くしたいものだ。

平成7年度分の文京区の食糧費は約3500万円。
のべ人数を質問したが、「わからない。伝票を見て時間をかけて調査しても無理である。」との返答。
食糧費とは会議等の茶菓・弁当代ということなので、1回1人当たり2000円として365日で割ると、
土・日も休まず、毎日およそ50人が参加する会議が開かれた計算になる。
文京区で参加者50人の会議は、大きな会議である。
のべ人数もわからず、3500万円という金額だけが出てくる不思議。


                      
                    公会堂委員会から

公会堂建設は中止できないのか」というお便りが、今も区民の方から私宛てに届く。
しかし、賛成多数で議会で可決した以上、建設に反対する区民がいくら署名を集めて届けても無駄なのである。
区長は、「議会の承認を得た」「大多数の区民の長年の希望だ」と公会堂建設を進めている。
私は委員会のたびに、自分にはあと何ができるだろうか、と悩む。
せめて、公会堂の運営を少しでも赤字の少ないものにしたいと、他の自治体のホールの運営状況を調べている。


                      
                     
都議会の海外視察について

マスコミがかなり取り上げてくれたのでご存知の方も多いかと思うが、昨年末、都議会の海外視察について
提訴した。日本全国・各地の市民や、都庁の職員からも激励の電話やファックスを
もらった。

    (96年11月28日付けの日経新聞と96年12月5日付けの東京新聞の掲載記事から抜粋)
「都議の海外視察は、任期中に1度は参加できるよう毎年10月、15日間の日程で定期的に運営されている。
 昨年10月も29人が欧州や米国を15日間にわたり視察。しかし、公式訪問地を移動する間に遠回りし、
 観光地で何泊もした。視察にかかった費用は議員1人当たり166万円、随行職員の費用も含め、総額は
 5264万円である。都の条例によると、都議の海外宿泊費は1泊2万9千円(朝夕食付き)、別に日当9400円
 (昼食代を含む)を支給、航空運賃はファーストクラス利用である。
 ところが、視察に参加した複数の都議によると、海外視察ではこの10年間ファーストクラスは使っていない。
 都議会では、実際にはビジネスクラスに搭乗して差額を浮かせるのは慣例となっていたようだ。
 昨年10月の視察の差額総額は1000万円を超える。差額の使い道について参加した都議は
 ” 旅行中の食事代やガイド料、視察先への土産代等の必要経費 ”としている。

 これに対して、文京区議と葛飾区議が差額の1部を都に賠償するよう求める住民訴訟を起こした。」

私は、最初から都に対して裁判を起こそうと思っていたわけではない。文京区議の海外視察と比較するために
かるい気持ちで都議の海外視察を調べたのだが、調べれば調べるほど、あまりにもひどくて驚いた。
また、1冊1000円以上の印刷費をかけて作った報告書は、ほとんど中味がない。
20年前から毎年10月に15日間行なわれている都議会の海外視察。15日のうち公式日程は3〜4日だが、
他の日に何をしていたのかは報告書に記載がなく不明である。
まず住民監査請求を行なったが、却下された。監査委員4人のうち2人は、この視察に参加した議員である。
あまりにも人をばかにした議会のやり方にあきれ、訴訟に持ち込むことにした。


                    
各党の政務調査研究費の報告書

            (文京区議各会派の昨年度分の政調費の収支報告書を掲載)
消費税があるのにゼロが並ぶ不自然な数字、備考欄に何も記載がない(何に使ったか内容が不明)、
自分の事務所費にあてるなどの目的外使用の報告書がみられる。(共産党以外は領収書がない)

(一例として××党の報告書は、総額が2160万円、内訳は、施設見学費497万円・資料印刷費242万円・
 街頭PR活動費他326万円・勉強会費369万円・文具費他214万円・人件費172万円などとなっている。)


                            
雑感

文京区議会の海外視察報告書は、まだできていない。議員からの原稿が集まらないそうだ。
私が都議会の海外視察に対して訴訟を起こした後、都議から文京区議に「若林ひとみ」について問い合わせが
あり、その答えは、「文京区議会の鼻つまみ者」だったという話。
「鼻つまみ者」呼ばわりされようが、常識がないと言われようが、この1年半で区議会が少し良い方向に
変わってきたのは事実である。さらに今、都議会では海外視察見直し論が出てきている。
これも、提訴の成果だと自負している。
行政府に財政改革を求めるなら、まず議会が税の無駄遣いをやめること、これが私の持論である。


                
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              資産よりも議会費の公開を (朝日新聞『論壇』 1998年1月23日付)

 
 先日、都議会議員の資産公開が行われ、新聞各紙もこれを大きく報じた。しかし、本人名義分のみ、
また普通預金や当座預金を対象外としたこの資産公開に、どれ程の意味があるのかと思う。
公開されるべきは、使途が不明朗な議会費の方である。

 私は3年前に初当選した区議会議員(無所属)である。一区民として文京区の豪華庁舎反対の住民運動を
行なっていた時、区議の待遇や議長交際費、海外視察の実態を調査し、その優雅さや不明朗さに驚かされた。
そして、議会を変えないことには私たちの生活の質が高くはならないことを痛感した。
ところが、議員になって初めて知った厚遇もあり、驚きは増すばかりであった。

 文京区議会で議会費の問題を指摘すれば、「都議会もこうなのだからこれでよいのだ」と古参議員にやり返される。
それならまず都議会を変えねばならない、と、私は都議会費の調査に着手した。
 同時に、これは日本の議会共通の問題でもあると思い、2年前、議会改革を目的に「開かれた議会をめざす会」を
設立した。「議員自らが公金使途に襟を正し、議会の情報公開と民主化を進めなければ、有権者の政治への
信頼回復はありえない」というのが「めざす会」の設立趣旨である。

 さて、現在47都道府県中、議会も情報公開条例・要綱の実施機関となっているのは、わずか7県である。
そのため議長交際費(都議会で1200万円)、議員待遇者会(議員OB)補助金(都で1000万円)等、
議会費の使途を納税者はほとんど知らない。
 議会費の中で私が最も問題だと思うのは政務調査研究費(以下政調費)、次に海外視察費、議長交際費である。
観光旅行まがいの海外視察については、私も含め複数の「めざす会」会員が各地で訴訟をおこし、
その内容が新聞・テレビ等で報道されているので、ここでの詳述はさける。

 議長交際費は、かなりの額が議員同士の飲食や、議員やその家族・親族の慶弔費、及び特定の団体の
機関紙購読料や協賛金に当てられているらしいが、調べようがない。
尚、海外の議会にこのように高額な議長交際費はない。
 政調費は議会活動を支える経費として、首長から議会各会派に出されている補助金であるが、
別名「議会の使途不明金」「議員の第2報酬」とも呼ばれている。47都道府県や、かなりの市、23区等の議会で
支給されている。そして、町田市等ごく少数の例外はあるが、大半は領収書不要の、A41枚の実績報告書のみで
収支決算が済んでいる。

 都議会の政調費は1人当り月額60万円。全議員分の年間総額は約9億円だが、領収書がないから使途に
疑問を感じても、その違法・不当性の立証は難しい。そこで私は、各会派の実績報告書過去3年分を調査・分析し、
97年度分につき住民監査請求を行った。
 毎年1000万円以上の資料を購入している会派がある。1冊2000円の本に換算すれば5000冊。
3年分で1万5000冊。この会派の控室は資料で足の踏み場もないはずである。
議会事務局職員が事務員として複数出向していながら、毎年議員1人当り200万円以上の人件費を支出している
会派もある。政調費は議員個人に支給してはならないことになっているが、各議員が個人秘書の経費に当てていると
推察される。97年度には、2ヶ月で1000万円以上の研究費を使用した会派もあった。一体、何の研究をしたのか?
 
 また、各会派とも各支出項目に1円の単位まで記入しながら、共産党以外は収支がぴったりあって残金はゼロ。
議会事務局は「領収書は各会派が保管しているはず」と言うが、報告書を見る限り、領収書を元に積算された金額とは
とても思えない。分析し3年分の資料を添えて、私は監査委員に精査を訴えたが、結果は棄却であった。
 都議会と同様のことが他の議会でも行われている。首長に提出する実績報告書は、議会が情報公開条例の
実施機関でなくとも、公開の対象となる文書である。「めざす会」では1昨年、25都道府県で96年度分の
実績報告書の情報公開請求を行ったが、開示はわずか7都県であった。

 国・地方の累積赤字は500兆円を超える。国会を含めた日本の全議会は議会費の使途を納税者に全面開示し、
支出の適否の判断をあおぎ、さらには議員年金制度や永年勤続表彰等の議員優遇策にもメスを入れるべきである。

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 昨今は、観光旅行まがいの議員の海外視察や、領収書の必要がない使途不明朗な政調費への批判が
 全国的に当たり前のこととなっていますが、10年前に、若林ひとみが「これは、おかしい」と声を上げ始めた時は、
 議会を侮辱したとして緊急動議で議会を退場させられそうになったり、発言中にヤジを飛ばされたり、
 上記の「議会便り」にあるように、「鼻つまみ者」(議員の特権を明らかにし、返上しようとする者の意?)として
 他の議員からは逆に批判の対象でした。
 10年かかって主張が認識されるようになったことに感慨を覚えるとともに、無所属の孤立無援の立場で、
 いやがらせの電話を受けたり、資料を持ち去るために住居侵入して室内を荒らされたりしながらも、
 よく女性1人でがんばり続けたな、と改めて思います。   (
私記