「 若林ひとみの文京区議会便り No.6 1996年秋号 」
−読書の秋 議員になって唯一残念なのは、神保町を歩く時間がなくなったことです。−
1996年10月30日発行 全4ページから抜粋・要約
区民世論調査の怪 これは区による情報操作では?
9月11日に3回目の一般質問をした。今回のポイントは”区民の声が公正に区政に反映されているか”。
<質問1> 第15回文京区政に関する世論調査について
@公会堂は建設に巨費を要する区の最重要課題だが、バブル崩壊後の大型公会堂建設の要・不要を問う
基本的な質問項目を設けなかった理由は何か。
<区長答弁>
世論調査は公会堂建設を前提とした素案について聞くもので、要・不要を問う必要はない。
A建設費に関する質問で、「もっと削減すべき」という回答選択肢を設けなかった理由は何か。
この選択肢がなかったため、「その他」として「もっと削減を」と書いた人が22人、「削減しても巨額で許せない」
「建設は中止を」と否定的意見を書いた人が61人いた。
<区長答弁>
建設費は可能な限り削減した。
Bシビックセンターを利用したことがない人に理由を尋ねているが、「税のムダ遣いの象徴には行きたくない」
「あんな高価な庁舎は不要と考えるため」「腹立たしくて使う気になれない」等の回答が27件あった。
シビックセンターへの批判を区長はどう読んだか。
<区長答弁>
シビックセンターは区民サービスの向上に寄与している。
C1008通の回答のうち、110通に「公会堂は不要、根本的な見直しを」と批判的意見が書き込まれ、
逆に肯定的意見は2通しかなかった。
また、「設問が適切でない」「質問が非常に誘導的」と世論調査そのものに疑問を投げかける書き込みも
あったが、調査の結果を報じた区報や報告書に、これらは一切記されていない。
都合の悪い意見はひた隠し、都合の良い意見のみ強調して公表するのは情報操作ではないか。
<区長答弁>
情報操作に当たらない。
<解説>
世論調査の回答票は担当課に見せてもらえなかったので、一区民として情報公開請求をし、
2000枚(1人の回答につき2枚の用紙があった)のコピーを取って分析した。
批判的な意見の書き込みは「その他」のところに書かれたものだが、これは、回答選択肢に○を
つけたいものがないための区民の意思表示であったと理解している。
区民世論調査の費用は560万円である。
<質問2> 公会堂建設計画について
区報に「大多数の方から公会堂建設計画の検討素案をご支持いただいた」とあるが、世論調査の結果は
決して「大多数が支持した」というものではない。「大多数」の根拠は何か。
<区長答弁>
様々ご意見はあったが、大多数の区民は賛成していると理解した。
<質問3> 審議会・協議会等の委員について
特定の区民が重複して区長の諮問機関の委員を務めている例が数々あり、区政モニターも同じ区民が
何年もやっている例がある。区民の意見が公正に区政に反映されていると言えるか。
<区長答弁>
いずれも最も適任な方々である。
<解説>
審議会・協議会等の委員を最も多く兼任しているのは、兼務数14の区長の後援会長である。
また、区長の後援会幹部は区政モニターを18回(14年連続)も務めている。
50人の区政モニターは公募で応募者は毎年定員を超えているのに、同一人物が14年も連続とは
公正な人選か。
<質問1・2・3のまとめの解説>
560万円をかけて世論調査を行なっても、都合の悪い答えが出てきそうな質問は設けず、批判的な
意見は無視。自分の後援会幹部を諮問機関委員に重用し、その人達の意見を「大多数の区民」の意見
として公表する。同じ人が23年も区長を務めると、こういうこともまかり通ってしまう。
区政モニター会議では、町会役員2人からシビックセンター反対の意見が出たが、今年8月発行の
「公聴と相談」(1年間のモニター会議の内容をまとめたもの)には、この反対意見は載っていない。
これは立派な情報操作だと私は思う。
<質問4> 区長の公務日誌作成について
前回の私の質問に対し、区長は「私の行動は区民によく知られているので公務日誌を作る必要はない。」と
答えたが、私自身、区長の仕事をよく知らない。区民からも、「選ばれて公務につく人の公務日誌作成は
当然」という声があがっている。公務日誌を作成してはどうか。
<区長答弁>
作成は考えていない。
<解説>
この区長答弁から数日後、議会事務局で区長が湯飲みを前に空を見つめていた。私が調べものをしている間
ずっと、同じポーズで椅子に座っていた。こういう区長の姿を見るのは初めてではない。
・・・区長が公務日誌を作りたくない理由がわかった。あまり書くことがないんだ、きっと。
<質問5> 区議会の政務調査研究費について
政務調査費の会計処理がずさんである。総額5300万円余りの公金の使途について、交付の趣旨通りに
使用されているか、使途明細を示す領収書なしでどのように支出の適否を判断しているのか。
<区長答弁>
適正に処理されていると考える。
<解説>
政務調査費については、事業計画書や詳細な報告書の提出を義務付け、厳格な使用規定がある
先進的な自治体と比べると、文京区の会計処理方法はずさんである。
11月の決算委員会でさらに追求する。また、「開かれた議会をめざす会」では各都道府県の政調費を現在
調査中、12月にマスコミを通し結果を発表する予定である。
毎度ながら、あまりにひどい区長答弁
一般質問も3回目だが、いつもあきれるのは木で鼻をくくったような区長答弁。今回も、「大多数が公会堂の
建設に賛成しているとする根拠は何か」と再質問したが、「先ほどお答えした通り」。
もっと驚いたのはこの後。本会議が終わって外に出ると区長が私のそばに来て笑いながらこう言った。
「政調費のことを僕に言われたってしょうがないよ。」
議長も居眠り!
9月10日、本会議場で、議員の質問中に議長が議長席で居眠りを始めた。区長の居眠りは日常茶飯事、
予算委員会では議長経験者が大口を開けて寝ていたので”居眠りアレルギー”はだいぶなくなったが、
本会議場の1番高い席で堂々と舟をこぐ議長にあ然。やがて他の議員、議会事務局長も気づき、
事務局長が議長のひざを突ついた。 議長報酬は月額93万円、年俸1500万である。
文教委員会から
文京区では、毎年夏休みに中学生をニュージーランドに派遣している。事前にどのような研修が行なわれるのか
知りたかったので、5月の「派遣中学生のための研修会」に担当課長の同意を得て参加した。
それを元に質問したところ、S議員から「若林議員だけ出席するとはどういうことだ。議員全員に招待状を出すべきだ。
事前研修など出なくても、後で内容を聞けばよい。」等々の横ヤリが入った。
それに対してI学校教育部長は、「若林議員は会場に突然現われ、帰れとも言えなかった。冒頭のセレモニーのみ
傍聴を許可した。」とウソの答弁をした。
事前に許可を得ていたし、セレモニー部分のみ許可などという話は誰からも聞いていない。セレモニーだけで
退席したのはI部長、私は最後までいて生徒と一緒に椅子の片付けをして帰った。
I部長は区長の腹心の部下、「区議会便り 第4号」でお知らせした「個人情報漏えい事件」は、I氏が職員課長時代に
起きたことである。
この後、学校の適正規模・適正配置(統廃合)のパンフレットについて「区民からどんな意見が寄せられているか」と
質問したところ、再びS議員から横ヤリ。 「そんなこと、後でまとめて聞けばよい!」
区側でまとめて説明するまで、議員の方から途中経過を聞く必要はない、と言いたかったのか。
私は、現在進行形の問題については、その都度質問をしていくつもりである。
衆議院選挙について
公示の2日前、○○党のある新人候補の事務所から私に電話があった。「急きょ公認を受け出馬することになったが、
政策がなくて困っている。あなたが”区議会便り”や”開かれた議会をめざす会”設立時にマスコミに語っていたことを
まとめて政策にしたいので、ファックスで送ってほしい。」
議員年金について
議員になると、議員報酬から毎月自己負担分として61600円が天引きされる議員年金に強制加入しなければ
ならない。私は国民年金だけでいいと思うのだが、公費負担割合は全地方議員一律で54%:46%、つまり毎月
税金から52500円の公費負担分が、自分が望まない議員年金のために支出される。
議員年金は、議員を3期12年務めて初めて支給され、12年に1日でも欠けると年金は出ない。
12年未満で議員を辞めると本人負担総額の70〜90%の一時金が出るが、たとえば1期で議員を辞めると
90万円の損となる。 だから、みな最低でも3期12年は議員をやりたがるのである。
ドイツの地方議員の平均在職年数は数年、普通は1期、長くて2期で辞める。
日本の議員年金組合、まさか、どこぞのお役人の天下り先になっていない?
雑感
先日、都議会議員の海外視察の住民監査請求を行なった。都庁の職員の対応が驚くほど親切で好意的。
「議会にお金がかかり過ぎている」と思う都庁職員は多いが、それを口に出すわけにはいかない。
そこに 「議員はお金の使い方にエリを正せ」という私が現われ、内心喜んでいるという話を聞いた。
こう思ってくれる職員が文京区役所にもいるといいのだが・・・。