「 若林ひとみの文京区議会便り No.2 1995年秋号 」
1995年11月10日 発行 全8ページから要約抜粋
9月14日 初めての一般質問
今春の選挙直後には6人いた無所属議員も、内4人が党に入ったため、残りは
私とN議員の2人。定例区議会の前に議会事務局長を通し議長から、一般質問については
2人で相談して決めてほしいと言われた。一般質問の時間は1人約1時間、
そこで私とN議員は、1時間を2人で分けて30分ずつ質問を行なう、等ということにした。
一般質問は文京ケーブルテレビで放映されるが、放映枠に制限があるので私達はテレビに
映らなくともよい旨も議長に伝えた。
しかし私達は議長と各派交渉会(各派の代表が交渉する会・無所属議員は傍聴も許されない)の
座長に呼び出され、「2人で相談して決めろは、どちらが質問に立つか決めろという意味だった。」
その理由は、区が発行する区議会便りに名前が出て無所属議員の宣伝になるからだそう。
議長 「どうしても2人で決められないないなら、質問時間の比例配分(全質問時間を
議員数で割り、各会派に人数分の時間を配分すること)もありうる。」
座長 「2人の(無所属議員の)意見を聞くというのは、議長の民主的な大変な配慮。
質問はいずれできるんだから、今回じゃなくてもいいじゃないか。」
質問には時事性の強いものもあるのに、「いずれ質問できるからいい」などと、当選7回の
議員から言われるとは思わなかった。
一般質問の要旨と解説
<質問1>
シビックセンター2期工事については必要な見直しを行なう、というのが区長の選挙公約だった。
シビックセンター特別委員会で「必要な見直しとは抜本的な見直しではない」と説明があったが、
区長の見直し指示の中に「(株)東京ドームの土地を除外した案の検討」はあったか。
<区長答弁>
東京ドームの所有地を除いた建設計画はもともと想定していない。
<解説>
2期工事の公会堂建設のために、区が水道橋近くに所有する土地と(株)東京ドームが
所有する土地を交換することになっていた。この区有地は、91年に都から122億円+
利子50億円=172億円の区民の税金で入手したもの。(区の年間予算は約700億円)
この土地を公会堂建設のために東京ドームの土地と交換しても国や都から補助金は出ないが、
福祉や教育関係の施設を作れば補助金が出る。
区報で、当初予定の2000の座席数を1800に減らした案が提示されたが、1800席だと
東京ドームの土地が必要、さらに減らせば必要はない。
<質問2>
区は(株)東京ドームとの間で、土地交換を約束する文書を交わしているのか。
<区長答弁>
東京ドームとは土地交換の合意ができている。
<解説>
91年に都から入手した土地は「公会堂用地」が使用目的であるが、都は「協議をして
払い下げ用地の使用目的を変更することができる」としている。
区が東京ドームとの土地交換に固執するので、文書を交わしているのかと質問をしたが
区長から文書に関する答えはなかった。
そこで、「文書の有無を明確に答えてほしい」と再質問(1回のみできる)したが、区長は
「合意している」と繰り返すのみ。
それ以上の再質問はできないので文書の情報公開請求を行なった結果は、「文書は
作成していない」。
89年の設計コンペ時から(株)東京ドームの土地は既に建設予定地に含まれているが、
区が交換予定地を都から入手するのはその2年後である。
(東京ドーム社長は、区の補助金を受けている文京区産業連合会会長)
この一般質問の直後、区長は東京ドームとの土地交換手続きを始め、それに対し、
10月16日に区民7人が「土地交換は地方財政法に違反する」として差し止めの監査請求を
行なった。しかし、監査結果を待たずに区は10月23日に土地交換を強行。
その結果、監査請求は「対象事項がなくなった」として10月31日に却下された。
<質問3>
2年前のシビックセンター建設室職員のカラ出張発覚時、前助役は退職金を辞退して辞職した。
それと比較すると「月給減額100分の10を5ヶ月」の区長の処分は軽いが、前期分の
退職金2230万円を返還するするつもりはないか。
<区長答弁>
返還するつもりはない。
<解説>
区長の全任期終了時に退職金を支払うと高額になり、区民からの批判を受けやすいので
4年の任期ごとに支払うことになった。現区長は6期目、退職金の総額は・・。
(区長の月給は、およそ125万円、ボーナス4.4ヶ月分と合わせて年俸は、およそ2050万円)
<質問4>
まちづくり審議会会長、シビックセンター設計コンペ審査委員長、選定された設計会社について、
まちづくり理念をどう評価し、仕事を任せたのか。
<区長答弁>
両氏は人物・識見等第一人者として評価の高い方、設計会社は企画力・技術力共に高く
評価されている国内有数の設計事務所と認識している。
<解説>
審議会会長は東京都長期計画懇談会の副座長である。この懇談会の答申を受けて、
都は副都心開発や都内各地の豪華公共施設の建設を行なった。
設計コンペ審査委員長は奇抜なデザインを得意とする人。氏が設計した九段の追悼平和記念館に
対し、千代田区議会から建設反対の意見書が国に提出され、設計が変更された。
東京ドームを手がけた設計会社は、シビックセンター設計コンペ以前に、区の委託で
「文京区まちづくりイメージプラン」を作成。プランをこの会社に頼んだ理由を知りたかったが
区長から明確な答えはなし。
設計コンペに参加した5社のうち、建物の高さが1番高く、区の予定工事費を14億円もオーバー
したのが、選定されたこの会社の設計案だった。
シビックセンターのすぐそばには、特別名勝・特別史跡に指定された小石川後楽園があるので、
高層庁舎の建設は本来慎むべきであった。
(特別名勝・特別史跡に指定されている庭園は、金閣寺・銀閣寺等、全国で6つだけ)
<質問5>
「文京ふるさとまつり」の一環としてミス文京コンテストが行なわれている。
区が負担したふるさとまつりの総経費が2400万円、そのうちミス文京の決算額が259万円。
税収が落ち込んでいる時期に、この催しに区の補助金が使われることをどう考えているか。
<区長答弁>
実行委員会の意向を尊重したい。
<解説>
民間で行なわれるのであれば、ミス・コンテストの開催に反対はしない。
審査員(芸能人)2人の謝礼10万円×2=20万円を含む259万円の他に、ミスの制服
1着10万円×6=60万円は別に支出、さらにミス・準ミスが区の催しに出席すると2時間1万円の
ギャラが支払われる。(区の税務相談の税理士への謝礼は3時間1万円)
文京区は住宅や高齢者対策が他区より遅れている。税金の使い道は他にあるのでは?
なお、文京ふるさとまつり実行委員長は東京ドーム社長。
また私のこの質問中、与党議員から「なんだよ、楽しみを奪うつもりかよ。」とヤジが飛んだ。
以上が私の初質問。
その他
<一般質問の内容通告>
日本では国会でも地方議会でも、質問を行なう議員は完全原稿を事前に提出し、
議場ではそれを朗読するのが慣例であるが、私は、これが議会を低迷させている原因と思う。
「事前に質問の完全原稿を提出する」と会議規則に規定がないことを確認したが、
議長から「完全原稿提出は文京区議会のよき慣習であるから守ってほしい」との連絡があった。
私は各質問につき4〜14行の要旨を提出した。
<ぶんきょう区議会だよりの行数>
各議員の質問要旨スペース、前回の90号までは無所属議員も会派所属議員も質問者数で
均等割りをして1人66行あったが、今回から無所属の分は大幅削減。
新しいスペース配分は、各会派に会派分として25行、残りを質問者数で均等割りになったので
会派所属議員は63行、無所属議員は38行に。
慣例となっている各議員ごとのカットや写真も、足りない分の行数の代わりに文章で埋めさせて
ほしいと申し出たが却下され、私が使える本文行数は24行。
これらは、無所属議員は出席も許されない議会運営委員会・議会広報小委員会で決められた。
議長は「無所属議員の議会活動が制限されるのは当然」との意見だが、無所属で立候補できるの
ならば、当選後も無所属のまま他の議員と同じように議会活動ができてしかるべきではないか。
<シビックセンター&公会堂>
文化財の保護に影響を与える可能性のある建物を建てようとする場合、文化財保護法により
事前に文化庁と協議をしなくてはいけない。
しかし、文京区は文化庁と事前協議を行なわずに高層庁舎建設を決定。
途中で気づいた文化庁が区に説明を求めたところ、まず出向いたのはコンペで選定された
設計会社の社員。その後の区の説明内容は「設計コンペも済んだので建築計画を進めさせて
ほしい」。文化庁は、「コンペ応募作品には高さがもっと低いものもある」と強硬に見直しを求めた。
しかし91年12月、区が示した高さを5m下げただけの見直し案に文化庁は建設許可を出した。
9月の特別委員会で、私が「質問!」と手を挙げているのに、委員長は「5時になったので
これで終わり」と強引に切り上げた。委員会を5時で終了する決まりはない。
私が昨年傍聴した委員会は夜中の12時近くまでやっていた。過去には12時過ぎの例もある。
区民の税金を何百億円もかけて作る公共施設の建設が、委員会で充分に審議されないまま
決められていくことにやり切れなさを覚えた。
私は公会堂の建設に反対なのではない。区民が本当に求めているのはどういう施設なのか、
公正・正確に調査すべきだと思う。
(一般質問1の解説にある)区が1800席のホールが最善とする根拠は、コンペ選定の
設計事務所が提出した資料によるものである。
私が1番悔しい思いで聞いたのは、区長等から「区民の多くは反対とは言っていない。
サイレント・マジョリティーも大事にしなくては。」と言われたこと。
私が「何も言わない区民が賛成となぜわかるのか?」と聞いても答えはなし。
みなさん、このまま黙っていては区民の多くは賛成と取られてしまう。
<編集後記>
拙著「クリスマスの文化史(仮題)」はいつ出るのかとお問い合わせをいただいたが、
当選後、執筆時間が取れず、残念ながら刊行を来秋に延ばしてもらった。