「 若林ひとみの文京区議会便り  No.11  1998年春号 」


− しばらくご無沙汰いたしました。 “私”があともう1人いてくれたなら、と思う毎日です。 −

        1998年5月11日発行 全6ページから抜粋・要約
    (区議会便りに続いて、議員時代のホームページからの文章を掲載



             6回目の一般質問(98・2・26)より


質問1
  文京区の教育委員会は職員の報告と説明がほとんどで、委員の審議時間はごくわずかしかなく、
  ひとことも発言しない委員もいる。現在の複雑化した教育問題に対応するためには、
  開催回数を増やす等、教育委員会の活性化を検討すべきではないか。
教育長答弁
  教育委員会は会議規則に沿って開催されている。今後も適切な運営に努めたい。
解説
  文京区の教育委員会のあり方に疑問を抱くようになったのは昨年秋頃からである。
  職員の説明・報告が時間の大半を占め、委員の発言がほとんどない状況に、「これでいいのか?」
  という思いが傍聴の度に胸をよぎっていた。
  さて、昨年のある委員会の最後にO委員が、「学校統合問題について子どもの意見は聞かないのか。」
  との主旨の発言をなさった。
  これに対して、「説明会で保護者から、子どもの意見は聞かなくてよいとの発言があった。」と
  担当課長の答弁。
  私はこの課長答弁に驚いた。説明会等で複数の保護者から、「子どもの意見も聞いてほしい。
  子どもにもわかるように説明してほしい。」という要望があったのに、担当課長の発言はフェアではないと
  思った。(私も、委員会で2度要望している。)
  
  山積する教育問題を解決するためには、教育委員会の活性化が急務ではないかと思い、かつて教育委員の
  準公選制を導入していた中野区の例を調べてみた。
  (中野区の準公選制は自民党議員の反対により、途中から区民推薦制になった。公選制時代を知る人は
  「今の中野区の教育委員会は停滞している」と言うが、文京区と比較すると生き生きとしている。)
          − 文京区と中野区の教育委員会の様々な数字的な比較表を掲載 −  
  中野区では、毎月第1金曜日に定例会、その他の金曜日は臨時会や協議会を開く。
  (中野区は毎週金曜日に2時間の開催。 文京区は40〜60分を年に16回の開催。)
  私は4月現在で4回、中野区に傍聴に出かけたが、毎回、冒頭に各委員の1週間の活動報告があり、
  その後は活発な議論が行なわれる。現行制度下でも、やろうと思えばここまでできるのかと思った。
  文京区では、毎回発言・質問をなさるのはO委員のみで、ひとことも発言しない委員もいるが、月25万円の
  報酬が支払われる。
  先日、中野区の教育委員会を一緒に傍聴した区民のUさんが、「文京の教育」(98・4・10号)に感想を
  書いておいでなので転載させていただく。
    
    「               教育委員会のあり方を求めて

     3月27日(金)、中野区の教育委員会を傍聴した。
     文京区の教育委員会を何回か傍聴し、そのあり方に疑問を感じて他区の様子を知りたくなり、
     区議の若林ひとみさんと確かめることにした。
     委員会室に入ってまず驚いたのは、文京区のように立派なテーブルや椅子ではないが、私たち
     傍聴者の方に向かってコの字に並べられていたこと。委員長・各委員・教育長が傍聴者と対面している
     のである。文京区ではテーブルは楕円形にセットされ、メンバーの背中を見る傍聴者は蚊帳の外という
     感じがするが、中野区では傍聴者への心配りが感じられる。
     また、この日の議題に関する資料が傍聴者にもすべて配布されるので、きちんと確認ができる。
     文京区では、区民の傍聴者には資料は何1つ、議題が何であるかさえ渡されることはない。
     そして委員会の最後には、傍聴者も意見や感想を述べることができる。もちろん、文京区ではできない。
     誰もが傍聴できるようにと、中野区では年に2回の夜の委員会や地域懇(談会)も開かれている。
     これらは、かつての教育委員の準公選制運動を通して開かれた教育委員会を求め、区民が
     1つ1つ変えていったのである。
     開かれた教育委員会にするには、まず関心を持つこと。事始めに傍聴に出かけてみよう。 

  5月29日、夜7〜9時、中野区では「夜の教育委員会」を開く。テーマは「最近の少年事件について」。
  関心のある方は、ぜひ傍聴にお出かけを。
  文京区の教育委員会も、せめて中野区の半分ほどでも活発になってほしいと切に思う。
  

質問2
  スクールカウンセラー制度の導入にあたっては、専門性の度合いがわかるようにすべきではないか。
教育長答弁
  大学の心理学科卒業者や退職校長等を配置する。
解説
  区は今年度、スクールカウンセラーを7名増員、退職校長をも充てるというので上記の質問をした。
  日本ではカウンセラー制度そのものがまだ定着しておらず、スクールカウンセラーの定義もあいまいであるが、
  関係者の努力で、「カウンセラーとは、心理学を学び、臨床経験のある心のケアの専門家」との認識が
  一般化してきていると思う。
  ところが区は、「学校の問題解決には、学校のことをよく知っている元校長が適任」と言う。
  学校がいやで学校に行かなくなっている児童・生徒の問題が、元校長に理解できるのだろうか?
  先日テレビで、臨床心理士が「スクールカウンセラー制度導入の利点は、学校外の人間が学校の中に
  入っていくこと」と言っていたが、まったく同感である。


質問3
  区長は、選挙公約を過去3年間で何%達成したと実績評価するか。
区長答弁
  100%である。
解説
  「  1995年 区長の選挙公約   私の約束

     1. 区民本位の公正で公平な開かれた区政
     2. 災害に強い安全で住みよいまちづくり
     3. 区民住宅・家賃補助など住み続けられる住宅対策の拡充
     4. 福祉をより一層充実し、生き生きと暮らせるまちづくり
     5. 男女共生社会の実現と青少年がすこやかに育つ施策の実施
     6. 中小商工業の振興と消費者の保護
     7. 歴史と伝統に育まれた教育・文化・生涯学習の振興
     8. 公会堂の早期着工                           」

  実は、83年・87年・91年・95年の区長選挙の公約は、毎回ほとんど同じである。
  それにしても、3年間で公約達成率100%とは、すごい。
  残りの1年は選挙対策だろうか?(来年、また立候補するようである。)
  私立の受験校が2年間で3年生までの勉強を終え、残る1年を受験勉強に当てるのと同じだね。


               
                ピアノ4台を救いました


 
真砂小と元町小の統合に伴い、大量の不用品が出た。
 旧庁舎から新庁舎に引っ越す時、区は区民の希望者に不用品を分けた。1年ほど前、担当課長に
 「今回も(同じように)していただけるか」と聞いたところ、「はい」という返事だったので安心していたが・・・。
 学校の引越しの日、元町小に行って驚いた。まだ使えるものが校庭に山と積まれ、翌日にはすべて“ゴミ”に
 なるという。
 ピアノ・アコーディオン・エレクトーン・ドラムセット・一輪車・扇風機・ストーブ・机・書類ケース・・・。
 まだ十分使える品が(新品同様のものも)校舎から次々と運び出され、ゴミになるのを待っていた。
 アルバイトの若者達が、「これ、もったいない。全部捨てるそうだ。持って行きませんか。」と、私に
 いろいろなものを持ってきてくれた。(自転車に積めるものは持って帰った。)
 私は、区民に知らせずに使えるものをゴミにするとは思っていなかったので、ただただ驚いた。
 というより、悲しくなった。しかし翌日には産廃業者が来るというので、どうしようもない。
 でも、状態のいい4台のピアノだけは、捨てるのを見合わせてもらうことができた。
 広報課に話をして、ピアノは区内の希望者に譲ることができるようになった。
 4月25日発行の区報に掲載しているので、ご希望の方は大至急、区役所に電話を。


                
公会堂委員会(98・3・27)より


前回(No.10)、公会堂の内外に区は2億円をかけて美術品を設置する予定とお知らせしたが、
この計画は当分の間、棚上げされることになった。理由は次の2つ。
 @緞帳の原画をクロアチアの画家に頼むはずだったが、日本の仲介業者の提示金額がとても高い。
 A公会堂前にマルタ・パン(都庁に6700万円の彫刻がある作家)の作品を置くことに反対の意見が、
   高名な美術関係者から寄せられ、区はアート選定委員会のあり方に疑問を感じている。

アート選定委員会は某県立美術館の元館長等、美術の専門家で構成し、シビックセンターや公会堂に
ふさわしい芸術作品を選定する委員会である。
しかし、シビックセンター内の作品は「抽象的過ぎる」と区民や職員に不評。公会堂用も外国の作家ばかりで、
与党議員からも不満が出た。区は、区内在住の作家の作品も検討するよう依頼したが、選定委員会には
取りあえげてもらえなかったそうだ。
アート選定委員会は、文京区にふさわしい作品より、自分達が関心を持っている作家の作品の導入に
熱心との印象があったので、私は今回の決定に異存はない。
ただ、アート計画はあくまでも棚上げで中止ではない。公会堂が完成してから、「建物の風格を高めるために」
改めて彫刻の設置を検討するそうである。
私は、多額の予算で彫刻を置くよりは、公会堂周辺に緑や花を植えた方がいいと思っていたが、
区民から「彫刻よりも木を植えよう!」とのお葉書をいただいた。 いいね!!
同じ考えの方は、「彫刻よりも木や花を!」と区役所に要望を伝えてほしい。

公会堂の建設は着々と進んでいる。


                    
春日局のカムバック

 
かつて旧庁舎前にあった春日局像、NHKが89〜90年に「春日局」のドラマを放映したのに合わせ、当時、
区に「春日局推進協議会」ができ、5410万円の「春日局特別対策事業経費」を支出した。
バブルの時期でもあり、区内企業から3500万円の協賛金も集まった。
テレビ関連のイベントを行ない、パンフレットやテレフォンカードを作ったが1000万円が残った。
その予算で春日局像を作り、旧庁舎前に設置していた。
新庁舎完成後に像が見当たらないので、昨年9月18日の公会堂委員会で、「像は今どこにあるのか。
公会堂完成後、またどこかに設置されるのか」と質問したところ、「アート選定委員会が、あれは芸術品では
ない。公会堂にそぐわない、という判断で・・。」という答え。
春日局ゆかりの寺院等に受け入れを打診したが断わられ、シビックセンター地下3階の駐車場に、
台座が壊れた状態で箱にしまわれ横たわっていた1000万円のこの像は、先日、礫川公園に設置された。
私が“バブルの像”と呼ぶこの像、また人目につくところに置いてほしくて質問したのではなかったのだが、
“バブルの塔”のシビックセンターと共に、「こういう税金の使い方をしてはいけない見本」として、
後世に警告を発していってほしいと思う。


                 
 予算特別委員会(98・3・12〜19)より
    

  
区議会便りNo.4でお知らせした議員待遇者会への年に150万円の補助金が、今年度予算は135万円に
 減額となった。私は会そのものが不要と思うが、10%カットでも大きな前進。担当者、よくやった!

シビックセンターの様々な業務委託費を調べていて面白いことがわかった。
 (問題があると思う部分を表で掲載。入札にもかかわらず、長年、毎年同じ業者が落札している。)
 契約課長は「たまたま同じところが続けて落札している」と言うが、これは単なる偶然か?
 私がこの件で質問をしていると、与党議員から「あんた1人の委員会じゃない」と横やりが入った。
 入札予定価格や入札のあり方の見直しを求めたが、今年度もまた同じところが落札した。
 この件に関する調査は続けていき、6月5日の公会堂委員会でも質問を行なう予定である。
 関心のある方は、ぜひ傍聴を。
 区では経営改善計画に基づき様々な事務事業の見直しを行なっているが、職員の細部への節約努力は
 評価しても節約には限界がある。長年続けられてきた悪しき慣習にもメスを入れるべきだと思う。


                 
         雑報・雑感


文京区では予算・決算特別委員会の議事録は作っていないので、委員会を傍聴しない限り区民は詳細を
 知ることはできない。一方、中野区はこの両委員会を始め、議会各委員会のテープ起こしを製本して
 行政情報コーナーに置いているので誰でも自由に閲覧できる。文京区は、テープ起こしは議員しか見ることが
 できない。中野区の今年度一般会計予算は937億円、区長交際費は250万円。文京区は(予算)745億円で、
 (交際費)500万円。人口も中野区よりはるかに少ない文京区で、なぜ倍の区長交際費が必要なのか?

区民センターの過去5年分の業務委託の入札状況も調べているが、ここでも毎年同じ業者が同じ仕事を
 落札する「住み分け」が行なわれている。シビックセンター分と合わせてみると“偶然”とはとても思えない。

任期も残すところあと1年。今後どうすべきか、とても複雑な心境である。

98年1月23日 朝日新聞“論壇”に掲載の記事が“Asahi Evening News”に転載された。
 (記事は、「文京区議会便りNo.7」の後ろに掲載してあります。)
 英文は日本文をほとんどそのまま訳出していたが、笑ったのは“議長交際費”の訳。
 英語では”Entertainment expenses” 、つまり“遊興費”。英語の方がストレートでわかりやすい。
  
 

               
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 若林ひとみの、世にも不思議な議員の世界―A  ( ハートネット 1998年3月1日 )
  

                         素人が舵を取る日本丸

 皆さんは、議員と聞くと何か特別な存在のような気がしていませんか。
 今回はドイツの議員、なかでも、私と同じ立場の市町村レベルでの議会制度について、天と地ほども異なる
 日独の実態をお話したいと思います。
  
  まず日本といちばん違うのは、地方議員が“有償ボランティア”(州議会議員は専従)だという点でしょう。
 議会は月2回ほど開催され(日本は年4回、1回につき10数日間)、1日当たり数千円の日当が出ます。
 (日本では議員報酬プラス議会日当。文京区議の報酬は年平均約2千万円プラス議会日当5千円)
 夕方から夜にかけて開かれるところもあれば、午後の1時に始まって夜中の12時までやるところもあり、
 それでも日当の額は変わりません。もちろん、議員としての報酬は他に一切なし!です。
 なお、任期は町によって違いますが、だいたい1期3年から5年ぐらい。長くやっても2期がいいところです。
 (日本では3期以上務めるとかなりの額の議員年金がもらえるので、なにがなんでも3期にこだわる。)
 というのも、彼らは自分の仕事を持ちながら議会活動をしているので、長期に議会活動ににかかわる
 時間的余裕がないのです。
 
  議員の本職は実にバラエティ豊かで、なかには主婦や学生もいますが、博士号を持つなどその道の
 スペシャリストが多いのが特徴です。
 具体的には、弁護士・医師・看護師・税理士・図書館員・教師・ソーシャルワーカーといった面々。
 そういった人たちが、自分たちの実務経験や専門知識をもとに、町が直面している諸問題を解決すべく
 知恵を出し合うのがドイツの議会です。
 さらに、彼らの勤務先も勤務時間中の議員活動を認めています。議員活動のために有給(民間人の場合)
 または無給(公務員の場合)の休暇を取れるシステムを国が保障しているのです。
 私がドイツでうらやましいのは、まさにソコ。専門知識が政治に直接生かされることほど、効率的な
 解決方法はありません。だからドイツは、とても暮らしやすいのだと思います。
  皆さんも、生活環境問題ではドイツが世界をリードしていることをご存知でしょう?
 たとえば、ゴミ処理問題もその1つ。ドイツでは、大学の物理研究員や化学を専攻して博士号を持っている
 議員たちが、科学的データをもとに環境にやさしい処理方法を論じ合っているのです。
 その点、日本の議員はドイツと比較すれば“素人”といってもいい。しかも利権がからみ、公平な判断が
 吹っ飛んでしまうようなことも、日本ではしょっちゅう起きているのです。
 私思うんですけど、そもそも日本の議員の活動内容って不透明ですよね。議会でひとことも発言しない議員や、
 選挙区内のイベントなどのご招待だけは欠かさない議員の話を聞くと「?」と首をかしげてしまいます。
  
  ドイツの人たちが多忙を縫って政治に参画するのは、社会人としての義務であり権利であり、
 また名誉であると考えているからです。自分の町に関心があり、問題解決にひと役買いたいという前向きな
 気持ちがあるんですね。
 利権の上にあぐらをかき、きちんとした議論もせず、税金で私的に飲み食いし、視察と称して観光や買春を
 愉しみ・・。こんな日本の議員たちを見ていると、ホント情けなくって。
 ちなみに、ドイツの議長交際費は月数万円。文京区では年間約400万円。
 「ゼロが一桁多くないか」と、ドイツ人にはなかなか信じてもらえませんでした。

  議員が変わらないのであれば、私たちが意識をあげるしかない。そして“素人議員”を“玄人”に育て上げる
 のも住民の厳しい目があってこそ。あなたの目が必要なんですよ。

      お飾りの議員はもういらない。素人に舵取りさせている舟に乗ってて不安はないですか?     」
 
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