「 若林ひとみの文京区議会便り No.10 1997年秋・冬号 」
ー この3ヶ月忙しかったので、9月議会と11月議会分を合わせてご報告します。 −
1997年12月12日発行 全4ページから抜粋・要約
(議会便りに続いて、議員時代のホームページからの文章を掲載)
5回目の一般質問(9月16日)より
<質問1>
シビックセンターの電気使用料は、旧庁舎の4倍強である。冷房の設定温度を1度上げる等、
さらなる節約の努力が必要ではないか。
また、区民・事業所に対する省エネの啓発も通年で行なうべきではないか。
<区長答弁>
区は節電に努めており、区民へも働きかけている。
<解説>
シビックセンターの冷房は、外気が何度であろうと常に館内が26度になるよう設定されている。
今年は夏の初めに急に冷え込み肌寒い日が続いたが、温度調節はなしで、中にいて寒かった。
空気が乾燥して日本よりも気温が低いイギリスで生まれた背広にYシャツ・ネクタイを、
蒸し暑い日本の夏に(男性が)着用して冷房をきかせるのは愚の骨頂とかねがね思っていた。
川越市役所では、今年7〜9月の3ヶ月間、庁内温度を28度に設定し、職員は半袖シャツにネクタイなしで
仕事をした。節約した電気代は太陽光発電の補助金にする試みを行なう、というので話を聞いてきた。
「始めは28度は暑いと思ったが、やがて、ネクタイなしの良さを実感した。市民にも好評。」と担当職員の話。
エレベーターのそばには、「ノーネクタイで失礼します」と職員手作りのポスター。
省エネのためにネクタイをしていなくても、職員の対応がていねいでテキパキしていれば怒る区民はいないと思う。
そこで、「来年の夏、ひと月だけでも、川越市のような試みをしてみてはどうか。」と提案してみたが、
区長の答弁は上記のように素っ気ないものだった。
川越市の職員は「こういうことはトップダウンでやらないとだめ。」と言っていたが、川越市のような試みを
82才の区長に期待するのは無理なのか?
<質問2>
姉妹都市交流にかかわる通訳代は、これまで常に文京区が支払ってきた。
対等な交流なら、通訳代も交互に負担すべきではないか?
<区長答弁>
通訳は文京区が独自につけているものである。
<解説>
姉妹都市交流では、通訳は受け入れ側が用意するのが普通だが、文京区はこちらからドイツに出かける時も
通訳代を負担してきた。文京区の希望で勉強会を開いてもらった場合は、その分の通訳代はこちらが
負担すべきと思うが、それ以外の市内見学等の通訳はカイザースラウテルン市側が用意すべきだろうと思う。
<質問3>
日本の公会計は現金主義単式簿記で、自治体の資産・負債等総合的な財政状況の把握が難しい。
発生主義複式簿記の企業会計方式の導入は、現在世界的な流れでもある。
実際の導入には法改正が必要だが、職員の意識改革・勉強を今から心がけてはどうか。
<区長答弁>
現行会計制度で効率的な財政運営に努めている。
<解説>
公会計への企業会計方式の導入は、すでにアメリカ・スイス・ニュージーランド等が行なっており、
建設省や大蔵省も調査を始めている。
導入に際し1番大変なのは、職員の意識改革であろう。
この夏、自治体職員のための公会計の勉強会があり、私も参加した。いくつかの区の職員が来ていたが、
文京区の職員の姿はなかったので(上記のことを)提案してみたが、まるで手応えなし。
収入役も財務課の職員も、「公会計への企業会計の導入などという話は初めて聞いた。」と驚いていた。
公会計の勉強会に出席している他の市の議員が、9月議会で私と同じ提案をしたところ、市長が積極的に
動き出したそうである。
繰り返しになるが、82才の区長に新しいことへの積極的対応を期待するのは無理なのであろう、きっと。
でも、区長は再来年の区長選挙にもまた出るそうである。 あーあ、誰か、いい候補者はいない?
公会堂委員会(9月18日、11月17日)より
公会堂建設は着々と進み、委員会では緞帳・他のアート計画や公会堂の使用料について審議が行なわれている。
しかし、公会堂内に設置される彫刻等については、美術の専門家からなる”シビックセンターアート計画委員会”が
作家の候補者を選び、委員会には報告があるだけ。私達議員は作品の選定にかかわることはできないし、
アート委員会の決定をくつがえすこともできない。
これから公会堂の内外に5点の彫刻が設置されるが、緞帳(5〜7千万円)と合わせ、アート予算は2億円である。
ところで、すでに完成しているシビックセンター内の絵画や彫刻の価格を、みなさんご存知?
私も聞いてびっくり。今度シビックセンターにいらした時、下の表を見ながら、じっくり作品を鑑賞してみてほしい。
(7点の作品の設置場所・作品内容・作家名・購入価格の表を掲載。価格は1点570万円〜2670万円。)
最高価格・2670万円の絵画はアルファベットを4つ並べたデザインでタイトルは”人間・・・夢”。(写真を掲載)
2370万円の彫刻は議員会議室の前に設置されたため、区民の目にふれることはほとんどない。
広く区民が共有できる場所に設置してほしかったと思う。
文教委員会(9月24日、11月20日)より
新しい学校の名前が決定
真砂・元町の両校合併でできる小学校は”本郷小学校”、二中・四中が合併する中学校は”本郷台中学校”である。
私は来年4月1日からの統合には(時期尚早と思い)反対したが、9月議会で4月からの学校統合が決定した。
決定した以上は、よりよい形で統合が行なわれるよう議員として最善を尽くしたいと思い、校名等を決める
統合準備会を小学校は6回全部、中学校は6回のうち4回、傍聴した。
小・中を合わせると数日おきに協議会が開かれ傍聴するのもかなり大変だったが、裏方の職員はもっと大変だったと
思うし、校名決定の過程など、とてもいい勉強になった。
両校の名前については、委員や職員のみなさんのご苦労に敬意を表して賛成した。
幼稚園の統合問題
9月議会の直前、平成12年度から本駒込幼稚園と汐見幼稚園を廃園にする、と区教委から突然発表された。
汐見は応募者が少なく仕方ないとしても、本駒込は需要が高く、廃園の理由がわからない。
本駒込幼稚園がなくなると、地域の子どもは千駄木幼稚園か明化幼稚園に通うことになるが、六義園あたりからだと
どちらも同様に遠く、片道約25分かかる。
私は、(ハンディをつけるために)雨の日に厚めの辞書を3冊持って千駄木幼稚園まで歩いてみたが、
3才の子どもが歩くには長過ぎる道だと思った。
幼稚園問題については、次回またご報告する。
カイザースラウテルン市からの訪問団を迎えて
10月20日から26日まで、カイザースラウテルン市からの公式訪問団が文京区を訪れた。
当初は10人が来日予定だったが、団長の副市長も大事な会議のため急きょ来日を取りやめ、議員・職員・市民の
計7人であった。
昨年、文京区議団が”ゴミ・リサイクル”をテーマにカイザースラウテルンを訪れたのを受け、ゴミ・リサイクル問題に
くわしい議員と担当の職員を派遣してきた。
21日にはシビックホールで講演会が開かれたが、区民への講演会開催の告知は充分とは思えず、会場の
あちこちで居眠りをする人の姿が見られた。区が通訳代100万円をかけての講演会、もっと広く区民に参加を
呼びかけ、ゴミ・リサイクル問題に本当に関心を持つ人達に聞いてほしかった。
22日は、ゴミ・リサイクルをテーマに約90分間、双方の議員の意見交換が行なわれた。
カイザースラウテルン側の議員は、博士号を持つ大学の物理の研究員や大学で化学を専攻した人物で、専門知識を
生かして”ゴミ・環境委員”として議員活動をしている。
職員も博士号を持ち、市役所に勤めて以来10年間、ゴミ・環境問題一筋の人物で、議員と職員の専門性が
日本との大きな差だと思った。
ドイツのゴミ処理は今のところ埋め立てが主流だが、これはコール首相率いるCDU(キリスト教民主同盟)の政策。
対するSPD(シュミット元首相やブラント元首相の社会民主党)は焼却派である。
この、CDU=埋め立て SPD=焼却 はカイザースラウテルン市においても同じで、両党の議員が自分達の政策の
優位性を自信を持って述べていた。 しかし、両党は決して敵対しているわけではなく、「必要とあらば、
また相手の政策がよければ協同歩調を取る」と両党の議員とも強調していた。
ところで、ドイツでゴミ・環境問題といえば”緑の党”だが、今回の来日メンバーに同党の議員がいない。
21日の歓迎会の席上、急きょ団長として来日したルーフ博士(SPD)が、「緑の党の議員は、議員が公費で海外に
行くことに反対のため来日しなかった。」と教えてくれた。
ルーフ博士が属するSPD内部でも公費での日本行きに議論があったそうだが、「今回は文京区からの依頼で
講演をするために行くのであり、公務だ。」ということになったそうである。
文京区の議員は、「来年は”福祉”をテーマにドイツに行こう。」と話していたが、私が”緑の党”が来日しなかった
わけを議員や職員に伝えたら、「来年もドイツに」という話は出てこなくなった。
来年は、姉妹都市交流10周年である。
カイザースラウテルン市では市民による公式訪問団を文京区に派遣し、また文京区からの公式訪問団を
1つだけ(メンバーが議員か区民かは文京区の裁量)受け入れるそうである。
私は、9月16日の一般質問でも取り上げたが、ぜひ区民にドイツを訪問してほしいと思っている。
みなさん、ご存知?
首相や大臣が何かあると着用する防災服。 あれは、どうしても必要なものだろうか?
2年半前に議員になった際、「私は防災服は不要なので、その分を防災費に回してほしい。」と言ったが却下された。
防災服の価格は、帽子・服・ブーツ・防寒着のセットで7万円。何か起きた時、議員が防災服のある場所にいるとは
限らない。全議員分の防災服費、266万円で防災備品を充実させた方がよいと思う。
11月8日の議会運営委員会で、与党議員からも防災服不要論が出たが、必要という意見の議員もいて
話はまとまらなかった。
雑感
★とにかく忙しかった。学校統合問題も一段落とほっとしたのも束の間、今度は幼稚園の統合問題。
連日、区内を自転車で駆け回っていた。おかげで運動不足にはならずにすむ。
★8月10・11日は、塩原で行なわれた”地方自治を学ぶ会”に参加。12日は正月以来初めての休みを取って
1日のんびりする予定だったが、西那須野町で議会運営委員会が開かれると聞き、片道1時間をかけて傍聴に。
塩原で読むつもりで持っていった本を、帰りの列車の中でやっと開き、「私も”議員”になった」と苦笑。
★複数の自治体の議員や職員と”公会計勉強会”を作り、公会計に企業会計を取り入れるとどうなるか、
定期的に勉強している。先進的な自治体の職員との交流は刺激的で、毎回得るものが多いが、
「文京区の職員とこのような勉強の場を持てたら、どんなにいいか。」とも思う。
★12月21日、12:15〜14:00、NHK・FMの日曜喫茶室でクリスマスの話をするので、よかったら
聞いて下さい。(「クリスマスの文化史」の本は今年も出せなかった。ごめんなさい。)
みなさん、どうぞ、よいお年をお迎え下さい。
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われら“微少派”健在なり 「地方分権」(1999年10月号)
「議会が既得権益を享受し、内容希薄な海外旅行などで自ら公金のムダ遣いを行っていたのでは、政治が有権者の
信頼を得ることはできない。議員は襟をただし、議会の民主化と情報公開に務めよう」と”開かれた議会をめざす会”を
旗揚げしてから3年余が過ぎた。
議会費の使途に意義を唱え、セレモニー化した議会審議の在り方に疑問を呈する私たちは、旧態依然とした日本の
多くの議会にあっては異端者である。また、談合問題を考える勉強会を開き、議会改革をテーマにしたシンポジウムを
延々と行なう私たちは、現在の日本では変わり者である。
今まで、シンポジウムや勉強会の講師に学者や自治体首長・ジャーナリストなどを招いたが、「こういう議員もいるのですね」
と驚きを込めた感想を漏らした方々が少なからずあった。
今春の統一地方選では市民派議員が確かに増えた。しかし真価が問われるのはこれからである。
愛知県では、万博反対を訴え参院選に当選した“市民派”の女性が、その後万博容認に転じて自民党に入党し、
支持者から公約違反で訴えられている。
無所属で立候補した人が当選後政党に入ったり、任期中に所属政党を変えたりするのは、日本では珍しくない話だが、
このようなルーズさが有権者の政治不信の一因にもなっている。
少なくとも私たちのように、政治の現状に飽き足らず、住民の意思を行政に反映させたいと議員になった者は、
その信念を曲げてはならないと思っている。
沖縄から北海道まで”めざす会”会員は約210名。うち議員は約90名。日本全国6万数千人の地方議員の中で
私たちは少数派どころか微少派である。そして多くが議会内では一匹狼であり、中には有形無形の圧力を受けている人も
いるが、そのことで主義主張を変えた人はいない。
私たちは、孤軍奮闘はしていても、住民が支持してくれる限り孤立無援ではない、との思いに支えられて活動を続けている。
いつの日か”少数派”になることをめざして。
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