” HITOMI コレクション ” Part 7

   
   若林ひとみが大学入学の際に、将来の自分の仕事となるドイツ語を選んだ
   理由は、映画 ”サウンド・オブ・ミュージック”への憧れでした。
   舞台となった場所を自分の目で見たい一心から留学、夢を果たしました。
   本人は中学時代からの憧れと夢をかなえたのですが、
   そのスタートが、ナチスに反対してアメリカへ亡命したトラップ大佐一家の物語が
   きっかけだったことは、その後の若林ひとみの人生の暗示のような気もします。
   大学での研究対象は、ナチスに抵抗し続けたドイツ人作家、
   エーリッヒ・ケストナー。(ナチス政権時代、彼の作品は焚書されました。)
   ミュンヘン大学留学中に 、ドイツの放送作家・ヘルマン・フィンケ氏の著作、
   ” ゾフィー・ショルの短い生涯 ” に出会い、ナチスへの抵抗運動を行なって
   処刑されたミュンヘン大の教授と学生達、”白バラ”グループの存在を知り、
   強い衝撃を受けます。
   それは、風景や街並みの美しさと音楽の素晴らしさが前面に出ている
   ” サウンド・オブ・ミュージック ”に心を揺さぶられたのとは異質な、
   現実に直面した衝撃でした。
   なぜミュンヘン大学前の広場は ”ショル兄妹広場” ”フーバー教授広場”と
   呼ばれるのか、なぜ大学の玄関ホールには”白バラ”のレリーフがあるのか、
   なぜショル兄妹と友人がギロチン処刑された日に記念式典が行なわれるのか、
   それらの訳を知った若林ひとみは、何かに背中を押されるように
   ” ゾフィー・ショルの短い生涯 ”を翻訳するために奔走しました。
   
   今回ご紹介するのは、クリスマス・ツリーに吊り下げるとても貴重な飾り。
   ナチス政権時代に軍用資金を集める目的で発行された、ひも付きのミニ本です。
   とても可愛い絵本ですが、どれもナチスのマークが印刷されています。
   (「クリスマスの文化史」59ページをご参照下さい。)
   これらのミニ本の収集は、本人にとっては、クリスマスとナチス、
   両方の研究の意味合いがあったようです。

   ” サンタ・クロース ”と呼ばれるようになる前の”クリスマスおじさん”の
   大きな人形もご紹介します。

5cm×7cm 裏表紙にナチスのマーク
狂気の時代とは言え、挿絵はかわいらしい

発行は1930〜40年代

ページ数は、どれも12ページ

上は”白雪姫”の7人の小人

挿絵画家の名前も記されています

”ヘンゼルとグレーテル”に”長靴をはいた猫”

ツリーに下げるために細いひもがついています

色は鮮やかに残っています

子供のための楽しい唄の歌集

上2冊は歌集 下は”シンデレラ”

日本人にも なじみのあるお話ばかり

1936年製作の”クリスマスおじさん”

高さは66cm 杖の上部には鈴が2つ

袋ではなく、「しょいこ」にプレゼントのおもちゃ
ラッパ・太鼓・木馬・人形
そり・果物にお菓子etc
プレゼントの種類は豊富です

毛皮のコートは、とてもあたたかそう

「クリスマスの文化史」(白水社)の
カラー口絵写真でも紹介

ブーツにスキーも細やかな作りです

顔はしわが深く、お腹は出ていません